いいんじゃないの。気にいったんなら。―我が家にアートがやってきた―Ⅴ
散歩の途中、ふらりと立ち寄った画廊で一枚の絵に魅せられた私。
衝動買いも極まったこの買い物についてついにカミさんに打診することに・・・
この日の夕飯も、娘や孫たちと一緒にとることになったので、食事のあと、恐る恐る切り出してみた。
「あのさあ、昼、散歩に行ったじゃない。その時、広尾の明治屋と同じビルにあるギャラリーに寄ったんだよ。」
「ああ、あの画廊ね。」
と、カミさんも娘たちも、どこのことかすぐにわかった。
「で、すごく気に入った絵があったんだけど・・・」
「ふーん、そうなの。どんな絵なの?」
「ブルーを基調にした抽象画なんだけど、すごくきれいなんだよ。明日にでも一緒に観に行かない?」
カミさんもブルーは好きな色なので気にいるかも知れない。
ここまでは良かったが、このあと、肝心な話を切り出さなければならない。
「で、できれば、初めてのことだけど、買っちゃおうかなあ、なんて思ったりしてさ。」
「あ、そう。一緒に観に行ってもいいわよ。それで、いくらくらいするの?」
そらきた!ここからが勝負どころである。
腹を据えてかからなければならない。
「ン十万円なんだけど・・・どうかな?」
と、言葉を絞り出す。
さ、雷が落ちるかどうか・・・心の中で首を縮めて返事を待つ。
すると
「いいんじゃないの。気にいったんなら。」
「へ!?!」拍子抜けした。
こんなにあっさりOKが出るとは思わなかった。
ここで『ほんとにいいの?そりゃまたどうして?』などと、いらんことを畳みかけるとやぶへびにならないとも限らない。
「じゃ、明日、一緒に観に行こうか。」
と、ここでその話は打ち切った。
さて、次の日、カミさんと次女親子と一緒に、昨日と同じ散歩がてら件(くだん)の絵を見に行くことになった。
ちょうどお昼の時間に広尾に着いたので、画廊と同じビル内にあるお蕎麦屋さんで昼食をとった。
これがそのとき食べたお蕎麦(肝心の絵がなかなか出てこなくてすみません)
食後、いよいよ画廊へと向かう。
絵は昨日と同じ場所に展示されていた。
つづく