カミさんに相談してみないことには・・・―我が家にアートがやってきた―Ⅳ
ぷらっと散歩に出た先の画廊で、とんでもなく魅了される絵に遭遇した私。
画廊のオーナー夫人は、熱心に購入を勧めてくる。
そんな彼女の話を聞きながらも、その絵に目が釘付けになっていたのであります。
そうやって見とれている間、彼女はこの絵の由来や、女性画家のこと、近辺の蒐集家の話などしてくれたが、私にとってそんな能書きはどうでもよろしい。
たして買えるものかどうか、恐る恐る値段を聞いてみた。
さっき観たピンクのシリーズは、今目の前にある絵の半分以下の大きさだったけれど、30数万円の価格がつけられていた。
ということは、この大きさからして3桁(100万円越え)はいくだろうな、と頭の中でぐるぐると計算してみる。はたしてどうだろうか。
ところが、彼女が示したのは、意外にもちょうど2倍くらいの価格で、思ったよりも安価であった。
もちろんそれでも、私にとって充分高価な世界の話ではあるが、
『無理すれば届かない額ではないかな。』
・・・などと頭の中で考える。
しかし、次の瞬間
『いかん、いかん、こんなもの衝動買いした日には、カミさんになに言われるかわかったもんじゃない。』
と、正気に返って、自分の気持ちを制御し直す。
そしてそれをそのまま目の前の画廊のオーナー夫人に伝えた。
「まあ私は気に入ったのですが、カミさんに相談してみないことには・・」
と、とりあえずカミさんをクッションにして逃げを打ったのである。
「相談してみて、なんなら明日にでも一緒に観に来ますよ。」
と、あてのない提案をした。
そもそも相談などできるものかどうか、わかったもんではない。
「ぜひそうなさってください。お待ちしておりますわ。」
と、ようやく画廊のオーナーは解放してくれた。
さて、そうやって画廊をあとにして散歩に戻ったものの、感動の余韻はなかなか消えるものではない。
『ダメもとでカミさんに相談してみるか。まあ、なんていうか、言ってみなけりゃわかんないしな・・』
と、頭の中でシミュレーションを繰り返しながら帰途についた。
アートは大事だよなあ。
つづく