絵に「強く惹かれる」という初めての体験―我が家にアートがやってきた―Ⅱ

孫たちの相手から一人逃げ出して散歩に出た私。

以前、写真を撮って注意されたギャラリーに行き着いた。

 

この日はもちろんそんなことはせず、大人しく端から展示作品を観て歩いた。

わりとよく見かける華やかな色遣いの花の絵などが飾ってある。

 

と、そのときである。

一枚の絵に私の目がとまった。

ピンクを基調にしたフワッとした抽象画のようであるが、なんだかすごく気になる。

「気になる」というより正確に言えば、すごく「気にいった」のである。

このフワッとした感じがとても気に入ったのです。

 

日常の延長で、なにげなく絵を見ていて、このときのように「かなり気にいる」或いは「強く惹かれる」という体験は初めてである。

もちろん、ゴッホやモネなど、いろいろな巨匠の展覧会というのは今までも何回か観に行ったことはあるし、旅先その他で美術館に行ったこともある。

 

しかし、あれらの絵画はいかに素晴らしいもので、私個人が気に入ったとしても、日常の生活圏内に取り込めるものではない。

所有するとなれば、いずれも数億、数十億円単位の代物である。

 

しかし、今目の前にあるのは、散歩がてら訪れた画廊で、普通に飾られている作品である。

つまり、私の日常生活圏内にありながら、巨匠の展覧会で感動したときと同じように私を惹きつけたのだ。

 

このピンク基調の作品はほかにも数点展示してされており、どれも、かなり私好みであった。

「ふーん・・」と、眺めながら額縁の下に小さく書かれた価格を見てみる。

三十数万円・・・高いのか安いのか、全くの門外漢なので判断などつくはずもない。

 

『しかし、こんな風に画廊で普通に販売されている絵をすごく気にいる、ってこともあるんだ。』

と、少し自分で自分に驚きを覚えながら、画廊を囲む廊下の角を曲がった。

 

と、その時である。

曲がった先に展示してあった一枚の絵に、私はくぎ付けになった。

その絵は、タッチからして、明らかに直前に私が初めて強く惹かれた画家のものである。

 

ただ、こっちの絵はピンク基調ではなく、ブルーが基調になっていた。

しかも、ピンクのものより横にかなり大きいサイズであった。

これを描いたのがどんな画家なのか、全く知る由もないが、ピンクの色遣いにも増して、私はこのブルーに魅了された。

 

 

つづく