他人にご宣託を仰ぐのか・・―経営者は孤独である・・は本当か?―Ⅱ

大きな企業のトップが、「重大な案件の最終決断を迫られているとき」など、孤独感を覚えるほど精神的に追いつめられるのだろうか。

最終決断の重い責務が自分に課せられているということに対して、耐えきれないほどのプレッシャーを覚えるのだろうか。

 

そこでふと思い出したのが「尾上縫」という女性である。

 

尾上縫:Wikipedia(ウィキペディア)より

尾上 縫(おのうえ ぬい、1930年2月22日 - 2014年頃)は、日本の実業家、投資家、詐欺師。大阪府大阪市千日前にあった料亭「恵川」を経営していた。奈良県出身。バブル景気絶頂期の1980年代末には「北浜の天才相場師」と呼ばれ、一料亭の女将でありながら数千億円を投機的に運用していた。しかしバブル崩壊とともに資金繰りが悪化、金融機関を巻き込む巨額詐欺事件を起こした。

バブル時代を象徴する人物の一人として「バブルの女帝」と呼ばれ、尾上をモデルとした小説を原作とした映画女帝』も公開された。

 

この尾上縫という女性、上記のように「稀代の詐欺師」「バブルの女帝」と称された人物である。

バブル絶頂の頃、この女性のご宣託を受けるために、金融機関の関係者やトップ経営者が彼女のもとへ日参していたというのだ。

 

中でも驚いたのは、日本興業銀行の頭取も訪れていた、と聞いたときである。

興銀の頭取となると、普通の経営トップとは話が違ってくる。

 

バブル崩壊後、この興銀は「みずほファイナンシャルグループ」へと吸収合併され、その名前は消滅してしまったが、当時は「銀行の中の銀行」と称されており、一般の銀行とは一段格付けの異なる存在だった。

その頭取でさえも、この女性詐欺師のもとを訪れていた、と知ったときは結構衝撃を覚えたものだ。

 

尾上縫は詐欺容疑で逮捕された後、取り調べの際に担当した検察官から見て、ほとんど金融に関する知識などないどころか、一般常識的な能力ですらあるのかと疑われるような人物だったらしい。

そんなひとりのおばあさんのもとに、名だたるエリートビジネスマンが日参してご宣託を仰いでいた、というのである。

 

そんなエリートたちも、自分で判断するより、この女性に運命をゆだねた方がマシ、と考えたのだろうか。

バブル全盛の狂乱の世の中だったとはいえ、振り返ってみれば不思議な話である。

エリートビジネスマンも一皮むけば・・・

 

つづく