カミさんはすぐに事態を察した―お金が足りなくなったとき・・・―Ⅱ

東京で学生生活を送っていた大学生の頃、定期的な親の仕送りで足りなくなって臨時に送金してもらったこともある私。

やがて、今度は親の方の立場になって、子供たちに仕送りするようになったのだが、3人の子供たちは、私の学生時代のようにイレギュラーな送金を頼んでくることはなかった。

 

特に末っ子の長男は、お金に関しては無頓着なようで、ガツガツしたところなど皆無なように思えていた。

ところがその長男が、ある日珍しく向こうからカミさんに電話をかけてきたのである。

 

電話口で長男は、なんだか口ごもって言いにくそうにしていたらしい。

「あのうお母さん、ちょっと話があるんだけど・・・」

と切り出したものの、なんだかいいにくそうでその後が続かない。

 

そこでカミさんはハッと気がついた。

「お金が足りないんでしょう?困っているんじゃなないの?」

と尋ねると

「うん、そうなんだ。ちょっと困っているんだ。」

との返事である。

 

実は、子供たちはそれまで3人それぞれ平等に家賃を分担していた。

社会人になっていた姉たちはそれぞれの給料の中から、学生の長男は仕送りの中から3分の1ずつ負担していたのである。

 

ところが、まず長女が留学したために、家賃は次女と長男の二人で半分ずつ払っていた。

ところがしばらくしたら、次女も留学してしまったのである。

 

という経緯があって、家賃を全部、親からの仕送りで暮らしている長男が払うはめになっていたのだった。

「困ったな・・・」

と思いつつも、長男は一人で払っていたのである。

 

まあ、そうなることは事前に分かっていたのだから、話し合うなりこちらに相談すればよかったのだろう。

しかし、バタバタとそういうこと(留学)になったためか、特に取り決めもしないまま姉たちは行ってしまったのである。

 

長男は黙って何カ月かは家賃を一人で払っていたようだったが、さすがに足りなくなってしまったらしい。

それでも、それまで親にお金の無心などしたことがなかったので、悪いと思ったのだろう。

連絡しかねていたのだった。

 

珍しく向こうから電話してきたのと、電話口で困ったような様子だったのとで、カミさんはすぐに事態を察したのだった。

 

小銭の山

お金が足りない!!

 

つづく