業界最大手でもこの程度か!―「働き方」について思うこと―Ⅴ

ちょうど日本がバブル経済へと向かい始めるちょっと前、いわゆるバブル前夜に東京で起業した私たちは、バブルの頂点へと日本経済がまっしぐらに突き進むのと歩みを同じくして急成長を遂げました。

ただ、その頃の働き方といえば、超長時間労働が当たり前の世界で、次々と発注されるレアな案件を、全社全員体制で必死にこなしていたのです。

 

なぜそんなに過酷ともいえる「働き方」になったのかについては、ここまでご紹介してきた通りです。

それは、一つは非常にレベルの高い案件が多かった、ということ、もう一つは、かつ前例のないようなレアな案件が多かった、ということになります。

 

この両者はある意味シンクロします。

そもそも、前例のないようなレアな案件であれば、複雑極まりない現代社会を反映したような、ハイレベルの難しい内容である可能性が高いわけです。

 

それでは、私たち自身が自分たちの能力の限界を自覚していたにもかかわらず、その能力を超えるような、レアでハイレベルな案件が、何故次々と発注されたのでしょうか。

その理由こそが、私たちが過酷な働き方にならざるを得なかったもう一つの要因でもあるのです。

 

それは一つ一つの案件をひたすら「丁寧に仕上げていた」からにほかなりません。

私たちは「業界」の存在を知りませんでしたし、そもそもマーケティングリサーチに業界的なものがあるのかないのか、今でもわかりません。

ただ、そういった会社がほかにも沢山ありそうだ、ということはわかっていました。

 

仕事を始めた最初の頃、ちょっとしたきっかけで、或る大手のマーケティングリサーチ会社に、こちらから発注したことがありました。

マーケティングの仕事を始めたものの、まったくノウハウがなかった私たちは、初めて受注した案件をどう処理していいのかさっぱりわからなくて、その会社にいわば丸投げするような形で発注したのです。

 

ところが、その結果は驚くべきものでした。

あがってきたレポートは、まるで使い物にならないレベルのものだったのです。

そのとき私たちが知ったのは、

「業界最大手でもこの程度か!」

ということでした。

 

お金をどぶに捨てたようなものでしたが、反面教師として、貴重な情報を得たことになったのです。

それは「丁寧な仕事」をすれば、この業界でもやっていけるかも、というものでした。

 

丁寧に仕上げておりました。

 

つづく