「先行投資型経費」の中の「企業価値の創出」という重要な役割―社長が意識すべきは、時代に先んじる「読み」と「決断」―Ⅳ

決算書の「損益計算書」に表示される「販売費及び一般管理費」いわゆる「経費」と呼ばれるものの中には、リアルタイムで消費される「消耗品費」や「旅費交通費」のような「即時消費型経費」と、すぐには事業遂行に影響しない「広告宣伝費」や「接待交際費」のような「先行投資型経費」があると申し上げてきました。

 

事業業績が思わしくなくなり、経費削減といったテーマが浮上したとき、経営者が真っ先に「削らなければ!」と考えるのは、後者の「先行投資型経費」ではないでしょうか。

これは当然といえば当然のことで、今すぐ事業業績に影響しないのですから、削減の優先順位としては上位にくるのです。

 

また、税理士や銀行といった、経営者を取り巻く会計や財務の専門性を持った関係者に助言を求めた場合も、そのように進めることが多いのではないかと思います。

彼らも同じように考えているからです。

 

さて、当たり前のようにこれまで進めてきた上記の優先順位。

常にステレオタイプの型通りに実行しても良いものでしょうか。

少し、発想の転換をしてみる必要はないのでしょうか。

 

長年私は、会計の専門家としても中小企業の顧問として携わってきた中で、真っ先に削減の対象となるのが「先行投資型経費」であり、実際そのように実践してきました。

ただ、それでよかったのだろうか、という疑問は常にありました。

そこで今申し上げたいのは、上記のように型通りに優先順位をつけることを改めてはどうか、ということなのです。

 

昭和から平成そして令和、この年月の間に、中小企業経営特に地方のそれがここまで疲弊してきたのは、ここの考え方が誤っていたからではないか、と考えるのです。

というのは、「先行投資型経費」に含まれる「企業価値の創出」といった重要な役割を、あまりにも軽んじてきたのではないかということです。

 

つまり、時代が激しく変遷してきたにもかかわらず、多くの中小企業は先行投資というものを怠ってきました。

中でも、最も身近な先行投資である販売促進関係への投資意識の薄さは決定的だったと思います。

 

その結果、ものが売れない、売れないから経費を削る、中でも「先行投資型経費」を真っ先に削る、だからますます売れなくなる、また削る、さらに売れなくなる、という悪魔のサイクルを繰り返してきたのではないでしょうか。

 

昔から、企業経営において常に「先行投資」が必要であるという事実は、古今東西当たり前のことでした。

経営上、先行投資的な考え方のできない企業は、おそらく時代に流れの中で淘汰されてきたのです。

 

黒板に書いたグラフ図

戦略的先行投資を行なってきたか?!?

つづく