マーケティング感覚不足によるプアな状況―「情報発信(アウトプット)」の前提にあるもの―Ⅲ

観光戦略の基本が「観光施策=情報発信」という昭和時代のマインドのため、まるでその機能を果たしていないと批判するデービッド・アトキンソン氏(「新・観光立国論」などの著書で有名な京都在住のイギリス人アナリスト、菅元総理のブレインとしても知られている)ですが、彼が指摘するのは、観光行政のプアさということになります。

その点に関する彼の指摘には、なかなかシビアなものがあるようです。

 

さて、アトキンソン氏の指摘される観光行政のプアさというのはどういうものなのでしょうか。

それについては次のように書かれています。

―行政と業者が悪いと思いますが、構成文化財はほとんど整備されることがありませんでした。

薄っぺらいパンフレットすら、できるのは一部。

ほとんどの場合、訪れると何の整備、解説などもされていないのです。

 では何をしているかというと、とんでもないお金をかけて作った動画や集客につながらないことがほぼ確実なSNS、誰も見ないホームページ、NHKで紹介されたことなどを誇っています。

本当にお粗末です。

各日本遺産のホームページを検索してもらえばわかりますが、情報はほとんどなく、写真が数枚、説明が数行だけというところも少なくありません。

Wikipediaのほうがよっぽど充実しています。―

 

いやはや、こういう指摘を読んでいますと、暗澹たる気持ちになってきます。

日本には、いわゆる「マーケティング」という概念が極端に不足していることがよくわかります。

 

どうすればこちらの提供する商材やサービス、ビジネスとして意図するところが伝わり、それが購買にまでつながるのか、を考え研究することをマーケティングといいます。

このマーケティング感覚の不足が、このような事態を呼んでいるのではないでしょうか。

 

しかしこれは、何も観光行政だけの問題ではありません。

商品パンフレットどころか、会社案内さえも持っていない中小法人はいくらでもあります。

 

つまり、日本社会ではマーケティングだけでなく「プレゼンテーション」という概念も著しく欠けているのです。

アトキンソン氏は

「一応「情報発信(アウトプット)」はやっているもののその中身が伴なっていない。」

と指摘されていますが、私から見ればその「情報発信(アウトプット)」もちゃんとやっているとはいえません。

 

          いいところはいくらでもあるのだが・・・

つづく