まずは提供するものの中身を充実させる―「情報発信(アウトプット)」の前提にあるもの―Ⅳ(おしまい)

日本の観光産業は、「情報発信(アウトプット)」の前にまずその観光資源の整備を行なうべきだ、と主張されるデービッド・アトキンソン氏(「新・観光立国論」などの著書で有名な京都在住のイギリス人アナリスト、菅前総理のブレインとしても知られている)。

ただ私から見れば、その「情報発信(アウトプット)」も充分なものとはいえません。

 

「情報発信(アウトプット)」のやり方、巧拙がそのまま観光資源ともいえるからです。

そういう意味では、日本の場合、「情報発信(アウトプット)」の方法そのものもレベルが高いとはいえない状況なのです。

 

「情報発信(アウトプット)」についてアトキンソン氏は、さらに次のように指摘されています。

―日本で観光業に携わっている人に対して、声を大にして言いたい。

重要なのは、まず観光地としての十分な整備をし、インフラを整えることです。

情報発信はその後で十分です。

宣伝の前に商品開発するのは当たり前

 ちょっと考えれば、私の言っていることが常識なのはすぐわかると思います。

要は、情報発信をする前に、商品開発をきちんとやろうと言っているだけだからです。

 まだ売る車が出来てもいないのに、車を作る技術、その車の名前、イメージを自慢する動画を作って発信したところで、ビジネスにはなりません。

 多くの観光地は、これと同じことをやっているのです。

道路表記はない、文化財の説明も多言語化していない、二次交通もなければ、十分な宿泊施設もない。

各観光資源の連携もできていないのに、情報発信だけはしている。

こんな観光地が日本中にあふれかえっています。―

いやはや何とも厳しいご指摘です。

 

「情報発信(アウトプット)」に関してこれほどシビアな批判を聞いたのは初めてです。

「情報発信(アウトプット)」の前に、まず提供するものの中身を充実させる、当たり前のご指摘ですが、観光業においてこの点がこれほどプアだとは、私も思っていませんでした。

 

「情報発信(アウトプット)」について、様々な角度から推奨してきた私ですが、アトキンソン氏の言われることはそれ以前の基本の基です。

自社の提供する商材やサービスについて、もう一度、マーケティング的な視点で見直してみる必要がありそうです。

 

        ここはイギリスの、確かピーターラビットの村だったと思います。

        よく整備された観光地でした。

おしまい