「綿入れ」を街の中で着るのか?!?―ダウンウエアの思ひ出―Ⅱ
私がまだ大学生だった約50年近く昔、日本では、というよりも世界の若者の間に、アウトドアブームというのが訪れたことがあった。
アメリカ発のこのブームは、主に若い世代を中心に流行ったのだが、バックパックというフレーム付きのリュックみたいなものに、いろいろ詰め込んで、日本中あちこちウロウロするという現象が起こったのである。
そこまで踏み切れなかった私みたいな怠け者でも、そのアウトドア用の機能を詰め込んだウエアは、デザイン優先のほかのファッションとは異質の魅力があり、大いに興味を惹かれた。
そんな中で、全く初めて目にしたのがダウンウェアだったのである。
それまで、羽毛を使った寝具みたいなものが世の中にあることは知っていたが、よもや街なかで普通に生活する人間が、それを羽織って動き回るというのは考えつきもしなかった。
結構革命的な衣料だったのである。
それまで、日本的な衣料の中で「綿入れ」という存在は知っていた。
受験生時代、いわゆる「半纏」という中綿の入ったモコッとした羽織りを、炬燵で勉強しながら背中からかけて愛用していたのである。
これは、今でいうホームウエアという奴であり、通常、それを着て外に出かけるなどということはおよそ考えられなかった。
当時の我々世代であれば、ガバッとそれを体に引っ掛け、炬燵で背中を丸くしてお勉強する時の必需品のようなものだったのである。
ところが、同じ中綿入りでモコモコした形状は似たようなものでありながら、それを着て堂々と街に出ようという話である。
もちろん、「綿入れ」の「半纏」とは全く異質のウエアとは言いながら、その新しいファッション感覚には少なからず戸惑ったのだ。
こんなことを聞くと、ダウンウエアなど当たり前の世界になっている今の若い世代には「そんな大げさな!!」と思えるかも知れない。
しかし、前述の「バックトゥザフューチャー」のようにそれを始めてみた人は、例えアメリカ人でも少なからず驚いたのである。
これはアウトドアブームの頃、よく見かけたウールリッチ社のウールシャツ。あの頃購入したものです。
つづく