絶妙の限定情報―マスク美人、マスクイケメンの現状―Ⅱ
街を歩くほとんどの人がマスクをするようになった現在の日本社会。
事務所を訪問する人々も、マスク着用が当たり前の世界になってしばらく経つ。
このマスク、女性にしても男性にしても、なんだかやけに美人やイケメンに思えてしまうから不思議である。
先日も提携企業の若い男性担当者が、仕事の打ち合わせで事務所を訪れた。
おお!こいつもなかなかのイケメン君ではないか。
打ち合わせもひと段落ついたところで、その彼に冷たいお茶を進めた。
それを飲むために、彼は当然つけていたマスクを外す。
と、そのときである!
彼のお顔の全容を見た私は軽い驚愕を覚えた。
『うっ、思っていたのと違う・・・』
私のイメージの中にあった、イケメン君の完璧な造作とはかなり異なる彼の現実の顔がそこにあった。
そうすると私は、何と表現していいか・・・
えも言われぬ生理的な気持ちの悪さを感じたのである。
今こうやって書いていても、あの彼には大変失礼なことを書いているというのは承知している。
彼は100パーセント何も悪くない。
悪いのは勝手に気持ち悪くなった私の方である。
もちろん彼が非常にブサイクな男だった、というわけではありません。
ただ、私の想像と違っていたというだけの話である。
しかしこのとき、私はマスクのもたらす効用というものをイヤというほど実感した。
もし、街ですれ違うマスク美人と思しき女性たちが、次の瞬間全員振り返ってマスクを外したお顔を見せたならば・・・・
これはもうほとんどホラーの世界である。
つまり、こういうことなのだ。
世の中に顔の上半分と下半分のバランスの取れた美形というのは実に少ない!のである。
美人というのは、顔全体のバランスが整っていて初めて成立するのだ。
なおかつ、マスクの場合、逆というのはあり得ない。
顔の上半分を隠して、鼻から下だけ見せて歩いている人がいたらそれこそ本物のホラーである。
マスクというのは、顔の上半分、という絶妙の情報のみを世間に与えることで、実力以上の評価を獲得していることになる。
ん!待てよ。
これって結構重要な発見かも知れないぞ!
マスクとは全く関係のない街なかのオブジェです。
つづく