ついに裁定は下された・・・―コート、コート、コート・・・続き―Ⅶ
長い間、探していたにもかかわらず、なかなか見つからなかった私の好みのダッフルコート。
偶然にも、ふらりと立ち寄ったポロ・ラルフローレンのショップで出会うことになった。
それまで散々探して、ほかで売っていないことはわかっていたので、一も二もなく買えばいいはずなのだが、その値段がいささか・・・・・
『特別なデザインでも、スペシャルな素材でもないこのコートがこの価格かあ・・・』
と、件のコートに袖を通し、羽織った姿を鏡に映しながらも、戸惑いを隠せない私。
まあ、これまでポロ・ラルフローレンの服は、何回か購入したことはあるが、基本的なデザインや作りはしっかりしており、買って後悔したということはなかった。
『どうせ長く付き合うことになるであろうこのコートも、後悔するということはあるまい。
それよりも、今買い損ねて
「あの時、やっぱり買っておけばよかった・・・」
と思うよりはいいか・・・』
頭の中でグルグルといろいろな思いが駆け巡る。
『ここで買い逃して、次に上京してきたときに・・・などと言っていたら、おそらく売れてしまっているだろう。』
頭の中は、無謀な決心に向かって大きく舵を取り、もはやまっしぐらに突き進みそうになっている。
そして、さして時間を要することもなく、ついに裁定は下された。
「じ、じゃあ、袖の長さをお直ししてこれください。」
・・決断の言葉を伝える私に、先ほどから私を担当していた男性店員は、少し驚いた様子だった。
こんなに早く結論を出すとは思っていなかったのだろう。
袖の長さを計り、お直し分の計測をして支払いとなったとき、
「伝票を用意してきますので、こちらでお待ちください。今、飲み物など持ってまいります。」
と、売り場の中央にあるソファーに通された。
前の年、セーターを買ったことはあったが、こんな扱いは受けなかった。
おそらく、いくら以上の購入金額の客にはこういうサービスをしてもいい、といったマニュアルがあるのだろう。
顧客満足度を高めるサービスの一環で、うれしがる人もいるのだろうが、私にはなんだか落ち着きが悪い。
『まあ、あってもなくてもいいけどな。』
程度のものである。
しばらくしてカード決済の伝票と、お直しの受け取り伝票が手元にやってきた。
サインをして、後日、コートは送られてくることになったのである。
これが件のダッフルコート。極めてベーシックな仕様であります。
つづく