決算書から自社の収益性や生産性をチェックする
強い経営のためには、「儲ける力」ともいうべき「収益性」や、ヒト、モノを活かしてどれだけ効率的に売上・利益を獲得できているかという「生産性」を表す数値をチェックすることが重要です。
会社の数値を見る際、「売上目標を達成したか、売上や利益が何%伸びたか、利益はどれだけ増えたか」などは、経営者の最も気になるところであり、最も基本的なチェック項目といえます。これらは、過去の数値と比べてどれだけ伸びたか、という成長性を表しています。それに対して、「いくらの元手(お金、資本)で、どれだけ儲けることができたのか?」「ヒト、モノを活かして、どれだけ効率良く売上、利益を稼ぐことができたのか?」を判断するのが「収益性」や「生産性」を示す指標です。その代表的な項目には次のようなものがあります。
・ 総資本経営利益率(%)。 ・ 1人当り加工高(限界利益)。 ・ 労働分配率。
【 儲ける力はあるか?~総資本経営利益率をチェックする 】
高いほど、収益性が高い(儲ける力がある)・・・これは、どれだけの資本(負債+純資産)を事業に投入して、どれだけの経営利益を獲得できたのかを表す指標です。この数値が高いほど、少ない資本で多くの利益を獲得した(収益性が高い)ことになります。総資本経営利益率は金融機関も注目する数値で収益性分析の入口ともいわれます。
【 従業員1人が生み出した限界利益は?~1人当り加工高(限界利益)をチェックする 】
これは、従業員1人がどれだけ限界利益を生み出したかを見る指標で、この数値が高くなるよう常に改善が必要です。この数値を時系列で推移を検討したり、同業者と比較したりすることで、自社の「生産性」の良し悪しを判断します。特に、決算書の売上や利益の数値は、総額で表示されていますので、この「1人当り」の数値は、生産性の向上をはかるうえで重要なヒントになることがよくあります。
【 人件費の水準は適正か?~労働分配率をチェックする 】
労働分配率は、高ければ高いほど人件費の負担が大きいことを意味します。この比率が年々増加している、あるいは同業他社や業界平均と比べて高い場合には、注意が必要です。だからといって、労働分配率を抑えるために極端に人件費を減らせば、社員のモチベーションの低下につながります。また、人件費の世間相場もあります。そのため、一定の抑制を加えながらも生産性を向上させる努力がどうしても必要になってきます。
今月のワンポイント実務
6月は労働保険の年度更新手続きを忘れずに!
労働保険(雇用保険と労災保険)は、毎年6月1日から7月10日までの間に「年度更新」の手続きが必要です。保険の給付は、雇用保険、労働保険がそれぞれ個別に行われますが、保険料の徴収等については労働保険として、一体で取り扱われています。「年度更新」では、賃金総額の見込額で算定した概算保険料に対する確定申告(精算)と、新年度の概算保険料の申告を併せて行います。