マーケティングはむしろ邪魔、時代が変われば真逆に・・―BtoB企業の現状に学ぶマーケティング―Ⅵ

日本経済を牽引してきたBtoB企業にマーケティング感覚やそのシステムが根付かなかった理由、それは「必要なかったから」と、庭山教授は喝破します。

これはいったいどういうことなのでしょうか・・・

 

庭山教授は次のように述べておられます。

― 戦後の日本経済は海外から「最も成功した社会主義国家」とやゆされるほど監督官庁が指導力を発揮して産業を育成し、企業の系列化が進みました。

多くのBtoB企業が売上高の過半を2~10程度の得意先に依存する構造ができあがり、その濃い関係を接待やゴルフなどでさらに強固にして、一丸となって海外市場でも戦ってきました。―

 

なるほど、政治的に社会主義体制をとった国々は、その後次々と崩壊しましたが、日本のように経済に軸足を置いて社会主義的な方策を取り入れたケースでは、かつてのように大きな成功を勝ち得たわけです。

ただ、心を一致させて集団で大きな課題に取り掛かる、というこの方式は、ほかの国々より日本人のマインドや行動様式に、特に適合していたのかも知れません。

 

とはいえ、この強みもやはり時代背景のなせる業(わざ)であり、時代が進みそのは背景が変化すれば、やり方を変えていかざるを得ません。

日本企業にマーケティングが根付かなかった理由について、庭山教授は次のように述べておられます。

 

―BtoB企業は既存の大口顧客を大切にしていれば、そこから案件が次々に生まれ、成長を続けることができたのです。

このように既存顧客から十分な量と質の案件を営業部門が抱えていれば、新たな取引先を開拓して商談を創出しようとするマーケティングはむしろ営業の邪魔になってしまいます。―

 

日本企業が持っていた特性には、なるほどと納得するものの、「マーケティングが邪魔だった・・・」という見解にはいささか驚きを覚えます。

言われてみればその通りで、かつて強みだったものが、時代が変われば真逆になるという典型的な事例として我々は肝に銘じなければならないのではないでしょうか。

 

 

つづく