系列取引先企業との濃い関係と地縁血縁社会との濃い関係は似ている―BtoB企業の現状に学ぶマーケティング―Ⅶ
日本のBtoB企業にマーケティングが育たないどころか、かつては邪魔な存在ですらあった、という庭山教授の指摘には傾聴すべき点が多々あります。
というのは、この現象はBtoB企業に限らず、日本の場合、ほかの経済社会でも顕著だからです。
その典型的な例が、私が以前から指摘している「地縁血縁社会への依存」です。
これは、大企業というよりは、地方における中小零細企業において顕著な現象でした。
庭山教授が指摘される「BtoB企業と少数の系列取引先企業との濃い関係」は「地方中小零細企業の地縁血縁地域密着社会との濃い関係」に極めて似ています。
いわゆる「村社会」の構図です。
これまでの地域経済は、まさにこのマーケットに依拠して食いつないできました。
それはまさしく、地方地域社会にも「人口(量)と購買力(質)」の両方があったからにほかなりません。
地域社会さえ大事にしていれば、マーケティングなど考える必要がなかったのです。
BtoB企業に話を戻しますと、日本企業の営業の特性を、庭山教授は次のように指摘しておられます。
―当時の営業の心配は受注後の「納品」であり、「競合他社の動向」でした。
そうした環境の中で成長してきた日本のBtoB企業が、自ら商談を創出するマーケティングに取り組んでこなかったのもやむを得ないと言えるでしょう。―
この指摘から思い浮かぶキーワードは「守り」ということです。
かつてのBtoB日本企業は、既存の顧客に粗相なく接し、既存の顧客を盗られないようにという点に注力していればよかった、ということが伝わってきます。
この中には、特に未来志向は感じられません。
つづく