多様性に時代、若者は何を目指す?―時代背景によって変わる職業への魅力―Ⅴ(おしまい)
さて、官僚制度がそうであるように、仕事にも仕組みにも魅力が感じられなくなれば、学生が目指さなくなるのも当然の帰結といえば当然の帰結なのです。
これは何も官僚制度に限ったことではありません。
私の所属する税理士という仕事も、若い人にその魅力があまり感じられなくなったのか、国家資格の受験生はかなり少なくなっているようなのです。
司法試験も同様の現状と聞きます。
また、それ(官僚)を目指す学生が最も多かった東大法学部が危機に瀕している点について、北岡名誉教授は
―(以前は)黙っていても優秀な学生が進学してきたので、惹きつけようという努力が足りない。(中略)
東大法学部には、外国語の授業がほとんどない。
外国人教授や実務経験者がほとんどいない。
女性職員も4人しかいない。
外国人の学生が極めて少ない。
これらは東大の世界ランキングが下がり続けている大きな理由だが、法学部で特に著しい。―
と、書いておられました。
東大法学部のカリキュラムは旧態然としたものであり、女性の教員も少なければ外国人教授の数も割合としては非常に少ないということなのです。
確かにこんな現状では、受験生が学部そのものに魅力を感じなくなるのも無理はありません。
自分の将来を冷静に見据えた大学受験生は、そのあたりを敏感に感じ取っているのだろうと思います。
世界に冠たる優秀な人材と言われた日本の官僚たち。
多くの質の高い学生を輩出し、その官僚制度を支えてきた東大法学部。
多様性の時代にあって、その価値がさらに問われているのです。
おしまい