質の高い日本の官僚制は維持できない?―時代背景によって変わる職業への魅力―Ⅳ
そもそも、これまでの「天下り」に始まって「渡り」を繰り返しながら「法外な退職金」を受け取っていく、という従来の仕組みにメスが入るのは、当たり前といえば当たり前の話だったのです。
そういった、いわば暗黙の裡に了解されていたゆがんだルールが矯正され崩壊するのは、この現代社会において時間の問題だったとも言えます。
そもそも長い間官僚の横暴が取りざたされ、国家の運営は政治主導でなければならない、と言われていたのはつい最近までのことです。
ところが、安倍政権がそれを実現し、そうなったらそうなったで、このような議論が持ち上がってくるというのはどういうことなのでしょうか。
現在、官邸主導の政治手法に多少の問題があるとしても、官僚主導の頃の方が良かったのではないか、とは私は思いません。
まだ改革への道のりが全く足りないのではないか、と考えるくらいです。
これまでの強固な官僚制度にしても、それが世の中にとって本当に必要な仕組みであれば、あえて崩壊に追い込まれることもないだろうと思います。
一時は極めてその威力を発揮した日本の官僚制度も、今や制度疲労を起こしているのではないでしょうか。
北岡名誉教授はその点を
―現状のような劣悪な待遇と政治に対する自律性の喪失が続けば、質の高い日本の官僚制は、維持できないだろう。―
と書いておられます。
これも私は、かなり官僚側に軸足を置いた意見だろうと思います。
おそらく「質の高い・・」というのは、意見の分かれるところで、質が高かろうがなんだろうが、役割を終えた制度は自然に淘汰されていくのではないでしょうか。
つづく