避けるべきは「カット・スロート・コンペティション」―悪循環の行き着く先は荒廃した市場―Ⅱ
茂木会長は生産性の計り方について次のような見解を述べられていた。
― 生産性向上というと、効率を高めることに意識が向きがちだが、分子の付加価値を高めることによっても生産性は向上する。
その方が潜在的な可能性はむしろ大きい。―
この場合、分母となるのが人数や時間などの労働力になるので、「効率」という言葉が前面に出てくるのであろう。
この分母を小さくすれば、計算上生産性は上がってくる。
つまり、このやり方から浮かんでくるのは、時短やリストラ、コストカットといった、どちらかといえばネガティブ、「引き算」の言葉である。
この点については、私も以前から少々疑問に思っていた。
つまり「引き算」をいくら積み重ねたところで、生産性の向上に関しては限界があるだろうと思っていたのである。
茂木会長は、この分母を小さくするという方法の逆を言っておられる。
分子である「事業活動によって生み出された付加価値」を大きくすればいいじゃないか、ということである。
この点について、茂木会長は次のように続けておられる。
―付加価値を高めることに逆行するのが極端な価格競争だ。
米国では価格競争のことを「カット・スロート・コンペティション」と呼ぶ。
カット・スロートとは「喉をかき切る」という意味で、できるだけ避けるべきと考えられている。―
「カット・スロート・コンペティション」というのは初めて聞く言葉である。
アメリカにおいても安易な安売り競争は忌み嫌われているのだ。
それが健全な事業感覚というものだろう。
つづく