私の少し困った原点―税理士制度が成立した背景を考える―Ⅲ

言うまでもないことだが日本は自主申告制度の上に成り立っている。

納税者は自分の納税額を自分で計算して納めなくてはいけないのだ。

 

考えてみればこんな制度は、識字率が高く、ある程度の計算ができて、尚且つ正直を是とする奇跡のような教育水準と国民性がなければ成立しない。

とはいっても、日本の労働人口の大半を占める給与所得者は、所属する企業なり役所なりの組織の方で計算してくれるので、自らはそれほど税務の知識を必要としないのである。

 

問題は、これまたかなり多くの人口を占める中小零細企業の経営者たちである。

こちらの方は先述の自己申告制度の適用をもろに受けることになる。

しかも、事業を続けている限り、その呪縛から逃れることはできないのだ。

 

とはいえ、この日本に数多く存在する中小零細企業は、自己申告制度に対応するために、必要な税務会計の知識を持った専門の要員を確保しておくなどの余裕はなかった。

 

そこを補完するためにできたのが税理士制度であろうと思う。

こういったいきさつを考えれば、この制度が決して悪いものではないことがわかる。

 

にもかかわらず、私が当初受けたこの制度に対する世間のネガティブな印象はどこから来たのだろう?と、改めて考えるのだ。

私には、それが当初のスタンスの取り方と、その後の世間とのかかわり方にあったのではないかと思われて仕方がない。

 

 

つづく