東芝問題に見る日本経営者の本当の問題Ⅲ
硬直化した名門日本企業の実情が、やがてどのような結果をもたらすかについても宗氏は以下のように触れておられる。
― 自社しか知らない、自社にしか適応できない社員の中から誕生した社長が、大きな井の中の一番大きな蛙であり、ガラパゴス島の王者です。
人脈が広いが、視野が狭い。順風に強いが、逆風に弱い。気が大きいが、肝が小さい・・・。
昨年、事故防止の義務を怠ったことで東電の旧経営陣が東京地裁に強制起訴されました。
しかし、事故対応の詳細を調べてみると、事故の被害が拡大した最初の5日間に旧経営陣が頼ったのはまさに弁護士でした。
どうやって事故の被害を止めるかよりも、どうやって法的リスクを減らすかを懸命に弁護士と相談していたのです。(中略)
これは中小企業を含む多くの日本企業の共通点です。
経営目標実現のための法律相談よりも、保身のための法律相談が多いのです。
中小企業なのに海外企業との契約書の審査に数週間もかける現実をみて、私は呆れてもう彼らにビジネスを紹介する気にもなりません。―
これを読んでいると、何とも情けない名門日本企業のトップの生きざまが浮かび上がってくる。
ただ、こういった大企業に限らず、日本中の様々なメカニズムがこういうトップしか生み出せない仕組みに出来上がっているのだ。
業界団体のトップ人事なども、まさにこの仕組みの上に乗っかっている。
その業界にとって、最も肝心な懸案事項よりも、周辺の体裁を整えることに腐心している。
これでは物事がダイナミックに前に進んで行く道理がないのである。
つづく