東芝問題に見る日本経営者の本当の問題Ⅱ
博士が2000人もいる人材の宝庫がなぜ「倉庫」になってしまうのか?
それは二つの原因が考えられる。
ひとつは、そういった豊富な人材をダイナミックに動かすだけのマネジメント力がトップにないということ。
もう一つは、博士号を取るまでの段階で満足してしまってそれをどんどん応用していこうというマインドに欠けるのではないか、ということである。
つまり、ひとつは管理の問題、ひとつは本人たちの問題なのではないか。
その点を宗氏は次のように書いておられる。
―しかし、名門企業に入った社員が中小企業に来るはずがありません。
東電、東芝、シャープ、ソニーなどの名門にいる社員達は「自分が誰か」よりも「自分がどこに属するか」のほうが大切です。
自分がどう生きるかではなく、どうやって無事に退職できるか、どうやって組織内のピラミッドをよじ登るかが彼らの目標です。
辞める人がいないため、東芝で中途採用の社員に会ったことがありません。
話によると東電の約5万人の社員にも中途入社の社員は一人もいなかったそうです。―
中途採用が常態化している中小企業からは羨ましい話である。
ただ、IT系などの新興産業に所属する企業も中途採用が多い。
そこでまた、新しいアイディアやノウハウを取り入れているのである。
名門企業の上記のような状況は「企業そのものが硬直化してしまっている。」というマイナス面も示しているのだ。
この流動性、柔軟性の欠如こそが、いま日本の名門企業が直面している最大の課題であろう。
これらの欠如がやがてどのような結果を生むかについても宗氏は触れておられた。
つづく