「惰性」というものの怖さⅢ
そうやって打ち合わせを重ねた後、いよいよ制作に入ると、専門職の連中はそれぞれ自分の仕事に取り掛かる。
カメラマンは対象物の写真を撮り、イラストレーターは絵を描く。
コピーライターはイメージの方向性を自分なりに定めコピーを考えるのである。
そうやって上がってきた、いわば材料としてのビジュアルや文章を紙面に割り付けデザインするのがグラフィックデザイナーの役割である。
しかし、その前に、私たちの会社では、その材料そのものを厳しくチェックしていた。
撮影に関してはほとんどの場合現場に立ち会ったが、カメラマンの撮ったものがこちらのイメージに合わなければ、納得いくまで何度も撮り直しさせた。
コピーライターの書いてきたものも同様である。
こちらのイメージ通りでなければ何回も書き直しさせたのである。
ときにこちらの要求に対して、専門職である彼らの言い分や個性とぶつかることがあった。
しかし、クライアントの意向をもっとも理解しているのはこっちであるとの立場を押し通して、彼らには従ってもらったのである。
ということは、こちらのチェック機能、力量が随分問われることになる。
時に専門家の意見をねじ伏せるわけであるから、納得がいく理屈や理由がなければ彼らは従わない。
つづく