恋をしましょう・・・?(ゴールデン街異聞)Ⅳ(おしまい)

この夜、あれだけ独壇場で傍若無人に振る舞い、散々我々に我慢を強いてきた男が支払いの段になって、こともあろうに

「金を持っていない。」

というのだ。

そういえば、さっきの外国人たちに

「僕のおごりだ。1杯飲みたまえ。」

なんてやってたくせに、こいつ。

 

大して高い店でもないので、金額はいくらでもなかったのだが、お勘定の約半分しか所持していなかった。

 

「残りは明日持ってくる。」

という男に、ママさんの怒りが爆発した。

「残りの金なんていらねーから、今あるだけ置いて出ていけーっ!

「ほんでもって、ここには二度と来るなーっ!『僕のおごりだ。』なんて気取ってんじゃないよ!」

「てめーは、金輪際出入り禁止だーっ。」

 

私もこの場に関しては仲裁などする気にはさらさらなれない。

心の中でママさんと同じように叫んでいた。

「とっとと消えろ。このアホめが!」

 

金を置いた男はオドオドと出て行った。

怒りの収まらないママさんは

「ああ、腹が立つ。こんなんでまた私の酒量が増えるのよねーっ、全く。」

 

「まあまあ、これであおる酒は、あんまりいい酒じゃないから、お怒りはほどほどに・・」

と、私もたしなめながらも気持ちはよくわかる。

 

結局、せっかく上京していい時間を過ごすはずだった貴重な夜をとんでも野郎にぶっ潰された、という何とも情けない話でした。

 

 

おしまい