恋をしましょう・・・?(ゴールデン街異聞)Ⅰ
新宿のゴールデン街に学生時代からもう40年以上通っている店がある。
ママさんはロシア語ペラペラの、気風(きっぷ)のいいインテリで大酒飲みだ。
現在、鹿児島暮らしの身としてはめったに顔を出すことはなくなったが、先日上京した折、久しぶりにぶらっと寄ってみた。
客は私が口開けで他に誰もいない。
しばらく昔話など交わしていた時にその日の事件は起こった。
「事件」と評したくなるようなその男も久しぶりにふらっとやって来たようだ。
ふらりと現れたその男は、入ってくるなりいきなり訳の分からない言葉を、少しナヨッとした甲高い声でしゃべり始めた。
どうもロシア語らしい。
どうやらその男もロシア語がやや堪能なようで、同じくロシア語OKのママさんに話しかける。
困ったことに、時折私の方にも顔を向けてなんかしゃべりかけてくるのである。
狭い店内だ。
話し相手をするのはやぶさかではないが、そんなん(ロシア語)では会話のきっかけにすらならないので困惑してしまった。
どこかよそで相当飲んでからやって来たようだ。
とはいえ、そういうコミュニケーションルール無視の会話が大嫌いなママさんは、始めっからウザったそうにしている。
つづく