兄弟仲が悪くて・・・―よく聞く愚痴ですが―

私には3人の子供がいる。上から、女、女、男の三人兄弟である。

もうそれぞれ成人して、上の二人には孫もいる。

三人とも大学進学の際に田舎を離れ東京の大学に進学した。三人にとってこれは既定の路線だったようで、地元(鹿児島)の大学とか、福岡、関西などは頭になかったようだ。

それというのも、私たち家族が東京に住んでいた頃生まれた子供たちで、上の女の子二人が小学校、一番下の男の子が保育園のときに田舎に帰ってきた。

末っ子の男の子は東京時代の記憶などなかっただろうが、上の二人は

「自分たちは、やがて東京に帰るのだ。」

という意識を持っていたように思う。

そうやって、次々と上京したとき、学費にしても生活費にしても、親としてはとにかく金がかかって大変だった。特に住居費は高額で馬鹿にならない。

そんな事情もあって、東京では3人そろって一緒に住むことになった。

 

そのときである。

「あれっ、他とうちではちょっと違うんだ。」

と気づかされたことがあった。

それは、カミさんが知り合いの何人かに、こんな風に言われたことでわかったのである。

「よく兄弟一緒に住めるわねえ。うちじゃ仲が悪くてそんなのとても無理無理。」

とか

「兄弟仲いいの?珍しいわね。」

といった意味のことを一人ならず何人もに言われたらしい。

それを聞いたとき、私もカミさんも「へぇーそうなんだ。」と、逆に不思議に思った。

というのは、うちの場合、経済上の事情とはいえ、みんなで住むことに何の問題も疑問もなかったからである。それりゃあ、それぞれに部屋を借りて住めれば、その方が気楽だっただろうとは思うが、あのときはそんなことさえ思いつかなかった。

 

そもそも、子供たちを見ていて、兄弟仲が好いとか悪いとか考えたこともなかったのである。

普通にしているように見えて、それが普通だと思っていた。ちょっとくらい兄弟喧嘩などあったのかも知れないが、少なくとも私の目の前でそれらしい様子を見たことはなかった。

 

だから、私の記憶では、私もカミさんも、例えば上の子に「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい。」とか「(自分のことはあとにして)下の子の面倒を見なさい。」とか「もっと、仲良く遊べないの。」とか言ったことはなかったと思う。

しかし考えてみれば、これは珍しいことなのかも知れない。

今回、こんなことを書こう、とふと思ったのは、インターネットの記事に、上の子に「お姉ちゃんなんだから・・」とか「お兄ちゃんなんだから・・」とか「年上なんだから・・」とかを親がしょっちゅう言うことによって、上の子供の性格にひずみが出たり、兄弟仲が悪くなったりする原因になる、といった内容のものがあったからである。

確かに、上記のようなセリフはよく聞くもので、別に珍しい話ではない。

だから、

「あれっ、うちの場合そういうのなかったな。」

と、ちょっと不思議な感じで思い出したのである。

上の二人は女同士で、初めから仲が良かった。下の男の子は年が離れすぎていて、喧嘩の対象にもならなかったのだろう。

 

まあ、我が家の場合、長女が極めて気の強い子だったから、下はとても逆らえないというところもあったと思う。ただ、お姉ちゃんとして、いろいろなことをきちっと仕切ってくれてもいたようだ。多少のワンマンでも、下の子たちは『まあしょうがない。』と我慢していたのではないだろうか。

それに、カミさんがすごく怒ったり、大きな声を出したりということは一度もなかった、というのも、激しい喧嘩など起こらなかった一つの要因だろうと思う。(私にはしょっちゅう怒っていたんですけどね。)

そうやって、優しかっただけに、逆に、子供達には「あのお母さんを怒らせたらマズい。」という意識が強かったのかも知れない。

 

とにかく、世間的に言えば、兄弟仲が好い、という状態でここまで来た。

とはいえ、あの子たちの本当の心情はわからない。

それぞれ言い分などもあるのかも知れないが、今、東京で、上の二人の子たちの近所で暮らしているカミさんを中心に、みんな仲良くしていてくれればそれに越したことはない、と、田舎に一人残された私は思っているのだ。

 

ほぼ全員そろっての食事風景

今では人数多すぎて、一枚には収まりません。