「顧客との顧問契約」という無形の資産が最も大きな資産―事業の継続性について考える・・ゴーイングコンサーンを実現できるか?―Ⅰ

私が大学を出て、新宿の公認会計士事務所に勤め始めた頃(40年以上昔の話ですね。)この業界の事業(いわゆる「税理士事務所」という形態)は、なかなか3代続くことはない、と聞いた覚えがあります。

いったい、どういうことだったのでしょうか?

 

それはつまり、税理士は資格業なので、その資格を後継者が取れなければ事業を続けることができない、ということなのです。

結構難しい国家資格でもあり、2代目までは何とか取れたとしても、3代目それ以降となると、ずっと継続して直系の血縁がこの資格を取れる保証はありません。

したがって、なかなか3代は続かない、という意味だったのです。

 

それと、向き不向きがかなり歴然としている職業なので、資格もそうですが、そもそもこの手の仕事をやりたいかやりたくないかが、その人の性格や志向によってはっきりと分かれるのです。

タイプとして向いていない場合、この職業に就いてそれを続けていくのはほぼ不可能だろうと思います。

 

実際、私が知っている税理士事務所も、直系の血縁によって何代も続いている事務所は少ないようです。

私が最初に勤めた件(くだん)の会計事務所も、おそらくもう存在していないのではないでしょうか。

 

私には3人の子供がいるが、結局誰もこの仕事は継ぎませんでした。

つまり、血縁としては2代目の私で終わることになります。

 

私がこれまで見てきた税理士事務所の終わり方はいろいろでした。

その中では、事務所の所長先生が亡くなった場合、丸ごと他の事務所が引き継ぐか、顧客はバラバラに分散されていろいろなほかの事務所が引き継ぐか、他人である有資格者が新たな所長となってその事務所に入ることで引き継ぐか、のいずれかのケースが多いようでした。

 

私が経験したのは最後のケースで、亡くなった先生に後継者のいなかった隣り町の事務所に私が入る形で引き継いだのです。

その後、父の事務所と合併して現在に至っています。

 

それほど規模の大きくない事務所の場合(ほとんどはこれですが・・)事務所の大きな資産といえば、建物や施設というよりも、抱えている顧客ということになります。

「顧客との顧問契約」という無形の資産が、税理士事務所の最も大きな資産なのです。

 

ある程度の顧客件数を抱えていれば、安定した収入が見込めるので、悪くない無形の資産といえましょう。

しかしこの資産を、滞りなく引き次いでいくというのは、それほど簡単なことではないのです。

 

お客さんと向き合うときは真剣に・・

 

つづく