働く従業員の問題でもある―事業の継続性について考える・・ゴーイングコンサーンを実現できるか?―Ⅱ

巷間、直系の血縁によって3代にわたって継承していくのが難しい、といわれている「税理士事務所」という事業形態。

それは、資格取得や能力、適性といった様々な問題があってのことといえましょう。

 

また税理士事務所の最大の資産ともいえる「顧客との顧問契約」という無形の事業資産も、なんの障害もなく継承していくのは簡単なことではないのです。

もちろん、この「顧客との顧問契約」というのは、一定の件数があってのことですが・・

 

さて、この代々承継していくことが難しいというのは、税理士自身の問題であることは当然のこととして、そこで働く従業員の問題でもあります。

というのは、所長先生が高齢になってきた場合、事務所の承継がはっきりしていなかったとしたら、従業員は

「俺の将来はどうなるんだろう?」

と、疑問を持つのは当たり前のことだからです。

 

もちろん、税理士事務所で働く人間の中には、

「いずれ自分も税理士資格を取って独立するんだ。」

という人もいますので、みんなが所属する事務所の承継だけを心配しているわけではありませんが・・・

この「いずれ独立派」が、実際資格を取得して、独立するとき、お客さんを持って行っただの、取った取られただのといったトラブルに発展するケースは、この業界ではよく聞く話です。

 

いずれにしても、税理士事務所で働く人間が、定年までコツコツずっと働くというのは珍しく、転職を繰り返すことが多いようです。

私の事務所も例外ではなく、父から私の代へと引き継いでいった際に、残った従業員は少なく、在職のまま定年を迎えた職員は数えるほどしかいませんでした。

 

ここまでのテーマを整理すると次のようになります。

・税理士事務所は小規模な上、資格試験のハードルが高いので、何世代にもわたって承継していくことが難しい。

・「顧問契約を結んだ顧客の集積」という無形の事業資産は、有形の資産である不動産などと違って引継ぎが簡単ではない。

・小規模な事業体である税理士事務所に対しては、従業員も長期的な展望を持てない。

・そもそも、独立を志向している職員にとって、所属事務所の存続、継続は興味の埒外のことである。

 

 

つづく