電卓と決算表

役員報酬支給額の改定時について

 

はじめに

 

 

前回はなぜ議事録が必要なのかについて、ご案内しました。

今回の役員報酬支給額の変更も、この議事録でしっかりと記述しておかないと税務調査で指摘され、追加の税金を求められる場合があります。

税務署に「損金に出来ません」と否認されない為にも、手順を確認しておきましょう。

 

Ⅰ.役員報酬支給額の改定での注意点

 

1:

期首から原則3か月以内に、1年間支給する役員報酬額を決決定します。

(例えば3月決算法人の場合、6月末までとなります。)

 

2:

支給額は前期が毎月同額で、今期も毎月同額となります。
(事業年度を通じて原則同額であること)

前期は月額50万で今期は70万、という改定は可能ですが、変更の理由を明確にしておくことが必要です

 

3:

支給期間は1か月以下の期間にして下さい。

プロ野球選手のような年俸制はダメということです。

 

4:

決算終了後の定時株主総会など、毎年所定の時期に行われる改定(通常改定)で決議してください。

前述のとおり、改定する場合理由を会議で示しましょう

 

5:

この時の議事録を作成し、役員報酬支給額についての記述をしてください。作成の注意点は前回の記事をご参照ください。  

6:

定款で役員報酬の額を決めている場合は、定款の変更も必要です。

 

以上のような点に注意してください。

 

 

 

 

Ⅱ.改定した報酬額はいつから支給するか。

 

定時株主総会で決議され、議事録なども万端となりました。

では、いつから支給したらよいでしょうか?

 

具体例で見てみましょう。

3月決算、毎月20日に支給という企業があったとします。

 

パターン1

パターン2

定時株主総会を5/25に開催した

定時株主総会を5/15に開催した

役員報酬の改定は6/20支給分から可能

役員報酬の改定は5/20支給分から可能

 

パターン 1のケースの場合、5/20支給分は改定できません。

定時株主総会を5/25に開催したため、「すでに支給した役員報酬については改定できない」からです。

 

Ⅲ.期中に役員報酬支給額を改定したい場合

 

当初の予想よりも売上が大きくなり利益が出る為、役員に対する報酬を増額したい。

あるいは予想外の業績不振で、減額したい。

 

このように期中に役員報酬支給額を改定したい場合、以下のような条件を満たす必要があります。

 

「増額の理由(例)」

1:

非常勤役員が常勤役員になったり、平の取締役が専務取締役になった場合など、一般的に見て仕事の責任が増えるので、その分、報酬が増額しても妥当とみなされる場合

2:

定款の役員報酬総額の支給限度内であること

3:

報酬額が「不相当に高額」ではないこと

 

 

 

 

 

「減額の理由(例)」

1:

業績や財務諸表の数値が悪化して、株主との関係上、役員としての経営責任を取るために役員報酬を減額せざるを得ない場合

2:

取引銀行との借入金返済の予定協議において、役員報酬を減額せざるを得ない場合

3:

特定の役員の不祥事により会社秩序を維持するため、あるいは会社の社会的評価への悪影響をさけるため、一時的にやむを得ず行われたものであり、その処分内容が社会通念上相当のものである場合

 

何れも臨時株主総会等の決議と議事録が必要となります。

 

 

 

おわりに

 

今回は議事録と関連して、役員報酬支給額の変更についてご案内しました。

 

ご不明点などが御座いましたら、当事務所までお問い合わせ下さい。