役員報酬(定期同額給与)の変更手続きとポイント
3月が決算月という会社も多いと思います。この時期に検討事項としてよく上がるのが「役員報酬の改定」です。
役員に対して毎月定額で払われる報酬の事を「定期同額給与」といいます。
従業員の給与と異なり、事業年度の途中での役員報酬の増額・減額には厳しい要件があり、それを満たしていないと変更額が損金として認められません。
その結果、余分に税金を納付する結果となってしまいます。
今回は、役員報酬を改定する際の手続きと注意点について解説します。
手続きの方法や時期は?(通常改定)
まず、役員報酬を改定する場合は、事業年度開始日から3か月以内に、株主総会を開催。議事録を作成して役員報酬の改定を行う必要があります。
例えば、4月1日が事業年度開始日の場合は、6月30日までに上記の手続きを済ませる必要があるということです。
もし改定時期を間違ったら?
事業年度開始日が4月1日の企業で、これまで50万円だった役員報酬を10月以降70万円に変更したとします。
この場合は、3か月以内の改定ではないため、10月から3月までの増額分 20万円×6か月=120万円は損金とは認められないこととなります。
改定時期に例外は認められないの?(臨時改定事由)
増額する場合は、平取締役が代表取締役になるなど、地位や責任が大幅に変わるなどした場合は認められることがあります。
単に業績が大幅に伸びたので増額する場合などは認められません。
減額する場合は、次のようなケースで認められます。(業績悪化改定事由)
ケース1:株主との関係上、業績や財務状況の悪化により経営上の責任から減額せざるを得ない場合
ケース2:銀行への返済の条件変更協議等において、役員報酬の減額をせざるを得ない場合
ケース3:業績や財務状況、資金繰りが悪化したため、取引先等の信用を維持・確保するために役員報酬の減額を盛り込んだ経営改善計画を策定した場合。
上記のように、業績や資金繰りが悪化するなど、やむを得ない場合は減額が認められることがあります。ただし、一時的な業績や資金繰りの悪化では認められませんので注意が必要です。
新型コロナの影響による業績悪化の場合
国税庁のHP「新型コロナウイルス感染症に関する税務上の取り扱い関係」では役員報酬の減額額について下記のように好評されています。
1.新型コロナの影響により収入が大幅に激減し、家賃や資金繰り等が困難となり、銀行や株主との関係からやむを得ず客員給与を減額しなければならない場合
→改定事由として認められる
2.(旅館業)外国からの入国制限や外出自粛により、当面の間は、これまで同様の売上が見込めないことから、営業時間の短縮や従業員の出勤調整を実施している。客足の回復の見込みが立たないことから、更に売上が減少する可能性もあるため、役員報酬の減額を検討している場合。
→改定事由として認められる
これまでの「業績が悪化した場合」だけでなく、2.のような「業績悪化が見込まれる場合」でも、「業績悪化改定事由」に該当するとのことなので、新型コロナの影響が大きい企業での役員報酬減額の場合は、ある程度、柔軟な対応がなされるようです。
このように、役員報酬の定期同額給与の改定には、様々なルールや注意点があります。
軽い気持ちで改定してしまうと、予想外の納税が発生する場合がありますので、事前に税理士にご相談することをおすすめします。