売掛金回収の法的手段~Vol.2
今週は、訴訟等についてお話します。
【 即決和解(訴え前の提起) 】
債権者と債務者の間に、債権額、支払時期、支払方法等について合意がある場合に、簡易裁判所の裁判官の前で合意内容を「和解調書」という書面にする手続きです。即決和解の申し立てに際しては、当時者が合意さえすればどの裁判所においても申立てをすることができます。
《 メリット 》 ・訴訟ではないが、判決と同一の効力がある。 ・裁判所での和解なので和解内容が履行(遵守)される可能性が高い。 ・公正証書よりも費用が安い(2,000円+裁判所から関係者への郵便費用)。
《 デメリット 》 ・裁判所に出頭しなければならないため、債権者が抵抗を感じ、和解がまとまらないこともある。 ・申立てから和解成立まで最低でも1~2か月程度はかかるので、その間に債権者の気が変わるおそれがある。
【 民事調停 】
民事調停とは、調停委員の仲裁のもとで、両者の話し合いで解決を目指すものです。相手が交渉に応じる余地があり、訴訟までは踏み切れないときに有効です。相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てます。
《 メリット 》 ・調停が成立し、調停調書が作成されると判決と同じ効力を持つ。 ・相手が調停内容を守らないときは強制執行が可能。 ・費用は債権金額で異なるが、例えば、50万円なら、2,500円、100万円なら、5,000円。
《 デメリット 》 ・裁判のような強制力はないため、相手が調停に出てこなければ始まらない。
【 公正証書による契約書の作成 】
公正証書とは、公証役場で公証人によって作られるものです。支払内容について合意がある場合に、合意内容を契約書として公証証書にしておくと、当時者間の書面よりも、証拠力が高くなります。公正証書に、「強制執行認諾文言」をつけることで、裁判(訴訟など)をしなくても、公正証書だけで強制執行をすることができます。
※ 強制執行認諾文言とは、債務者が契約どおりに履行しなかったら、直ちに強制執行を受けてもよいという文書のこと。
《 メリット 》 ・裁判所に出頭する必要がないので、債務者の理解が得られやすい。
《 デメリット 》 ・即決和解より費用がかかる。 → 費用は金額によって異なりますが、基本は債権金額が100万円以下なら5,000円です。
【 支払督促 】
支払督促とは、裁判所から債務者に支払うように命令を出してもらう制度です。債務内容や事実関係に争いはなく、単に支払ってくれないという場合に有効です。相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申立てを行います。
《 メリット 》 ・裁判所から送られる支払督促に対して、債務者が2週間以内に異議申立書を提出しないと債権者は債務者の財産に強制執行することが可能になる。 ・費用は債権金額で異なるが、例えば、50万円なら、2,500円、100万円なら、5,000円。
《 デメリット 》 ・債務者から異議が出れば、通常の訴訟に移行してしまう。
【 少額訴訟 】
少額訴訟とは、60万円以下の売買代金請求や賃金請求などの金銭の支払いを求める場合に限り利用することのできる特別な裁判制度です。話し合いの余地がない、支払督促ができないなど、他の手段では解決が難しいときの方法として考えられます。原告の言い分が認められてる場合でも、分割払い、支払猶予、遅延損害金免除の判決がされることがあり、和解による解決もあります。
《 メリット 》 ・1回の期日で審理が終わり判決がでるので、通常の訴訟よりはるかに迅速である。 ・費用も安い(債権金額が50万円であれば、5,000円+訴訟の送達・判決・呼出状など郵送代)。 ・勝訴すれば、強制執行で回収できる。
《 デメリット 》 ・相手が少額訴訟に同意しなければ、通常の訴訟に移行してしまい、時間と費用(特に弁護士費用など)がかかる。 ・勝訴しても、相手に財産がなければ回収できない。
法的手段は、取引先との関係を悪化させ、その後の取引ができなくなる恐れもあります。まずは交渉での解決を心掛けるべきですが、やむを得ない場合は適切に法的手段を活用して解決をはかることも必要になります。