電卓と決算表

売上アップへの取り組みをチェックしよう その(1)

自社の今年の売上や利益の目標に対してどうだったでしょうか。

 年末にあたり、まずここでは今年の中小企業の現状に関する統計や調査データを紹介します。

1.6割の中小企業が販路・市場拡大に重点

 平成22年4月に大阪商工会議所が、同所会員の中小企業3,000社に行ったアンケート調査の結果では、「重点的に取り組みたい経営課題」として、「前向きな姿勢」が目立つ回答が多くみられました。

 ■重点的に取り組みたい経営課題についての回答(複数回答)

  1. 既存事業の販路・市場拡大・・・・・・・・・・・・59.4%
  2. 人材の確保・育成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41.7%
  3. 既存製品・サービスの高付加価値化 ・・・・・40.2%
  4. 新しい収益源の確立%・・・・・・・・・・・・・・・・38.7%

2.日銀短観「前半は景況感がやや改善、後半以降は円高の影響が懸念」

 2010年9月の日銀短観では、中小企業(全産業)の※業況判断DI5ポイント上昇、数値の上では、今年前半は景況感の改善が見られました。
その一方、先行きの見通し(12月予測)については、9ポイントも悪化しており、年末に向けて景況感の悪化を予想させる結果が出ていました。
 実際、夏以降、急激な円高が進行し、輸出型企業にとって大きなマイナス要因になっています。
現状の円高水準は長期化の様相を呈していますので、景況感が一気に悪化すると思われます。

 ※業況判断DIとは…日本銀行が企業を対象に四半期(3、6、9、12月)ごとに経営者アンケート方式により実施する「短観:企業短期経済観測調査」で、企業の景況感(企業の経営者が、景気の現状および先行きをどのように見ているか)を表す指数のこと。
 企業は、業況の現状と先行きについて、 「良い」 「さほど良くない」 「悪い」
の3つの選択肢から選ぶ。「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を引いて計算する。
 企業判断DIがプラスであれば景気は良いマイナスであれば景気は悪いと判断する

3.中小企業の国際化

 国内需要が伸びない中、海外に活路を求める中小企業も増えています。
「2010年版中小企業白書」によれば、実際に国際化を行っている中小企業への「国際化のきっかけ」として、「自社製品に自信があり、海外市場で販売しようと考えた」という前向きな理由が最も多くなっています。
また、取引先の生産拠点の移転に伴って国際化したという回答が二番目に多くなっています。

 ■国際化のきっかけについての回答(複数回答)

  1. 自社製品に自信があり、海外市場で販売しようと考えた・・・・・・・・・・・・38.0%
  2. 取引先の生産拠点が海外に移転した・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23.3%
  3. コスト削減要請に対応するための海外生産の必要性を強く認識した・・・22.2%
  4. 取引先に勧められた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21.7%
  5. 国内の販売が伸び悩んだため、海外市場に打って出ようと考えた・・・・・21.0%
  6. 同業他社の成功例に触発された・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4.9%
  7. 取引先金融機関から勧められた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.6%
  8. その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15.0%

4.中小企業への円高の影響

 企業の想定レートを上回る水準の円高が続いています。
経済産業省は、円高の影響についての緊急ヒアリングを実施し、
その結果を8月末に公表しました(調査期間:平成22年8月11日~8月24日)。
その中で、円高が継続した場合の影響について、中小企業(下請けを含む)の声を紹介しています。
円高は、調査期間以降も進行し、10月中旬には81円台を記録しています。また、上場企業の8割は円の想定レートを90円としていたため、今後、さらに深刻な状況が続きそうです。

(中小企業の声)

  • 取引先からのコストダウン要求が昨年末の急激な円高以降、強くなっている。
  • 大手メーカーからのコストダウン要請が、川下メーカーに来ている。
  • 国内生産を切り詰めて、海外生産に依存しなければならなくなってきている。
  • 中国などの部品メーカーに受注を取られてしまう。

(今後の影響についての声)

  • 円高が続くと、海外進出が加速化し、国内が空洞化するおそれがある。
  • 円高の影響が、顧客である部品メーカーや輸出企業などに及べば、さらなる値下げの要請がくる。
  • 中国製品の薄利多売品との競合を避け、独自の高付加価値製品への特化を目指すしかない。
  • 長期化すれば、取引先にとって価値上昇となるため、競争力低下につながる。
  • 海外他社との競争が激しくなり、海外展開がしにくくなる。
  • 今後は、為替変動に影響されない製品作りを実施する以外にない。

 ☞ 【参考】  経済産業省「円高の影響に関する緊急ヒアリング結果」
          (http://www.meti.go.jp/press/20100827001/20100827001.html

          中小企業庁「2010年版中小企業白書」
          (http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/index.html)

          大阪商工会議所「中小企業の経営実態と課題に関するアンケート調査」
         (http://www.osaka.cci.or.jp/Chousa_Kenkyuu_Iken/press/iyc100519.pdf_)