思い入れや情熱は?―助成金のあり方使い方について改めて考える―Ⅲ

元々やろうと思っていた事業があったのに対して、ぴったりの助成金があったので申請してみた。

・・・・その結果採用され支給されたので助かった。

或いは、残念ながら承認されなかったが、事業は当初の計画通り進めた。

・・・というのが本来の助成金のあり方ではないか、と思うのです。

 

ところが、実際には2番目にあげた

・資金の目途がついたらやろうと思っていた事業計画があったが、ちょうど当てはまるような助成金制度があったので申請してみた。

というケースが多いのです。

 

このパターンだとどういうことになるかというと、

「助成金がおりなかったら、考えていた事業はやらない。」

ということになります。

厳しいことを言うようですが、

「だったら最初から本当にやる気はあったのかな?」

と、私は思うのです。

 

助成金のような不確定要素の高いものが、その事業計画のメインの部分を占めることになるからです。

助成金による資金手当てがなかったならば、経済上のリスクが高くなるのでやらない、という話になります。

 

その場合、考えていた事業への思い入れとか情熱といったものはどうなるのでしょうか。

「そんなものでは事業はやれるわけがない、綿密な計画性や資金の裏付けがあってこそ事業は成功するのだ!」

という人がいるかも知れません。

 

確かにその通りです。

単なる思い込みだけの無謀な事業は、リスクが高いと思います。

しかし、逆に資金と計画性があれば、事業は成功するでしょうか。

 

私は、東京でマーケティングビジネスを展開していたとき、大企業の新規事業開発部門のマーケティングリサーチを何件も手掛けました。

その中には、今考えればかなり世の中に先行した優れた試みのものもあったと記憶しています。

大企業がバックですので、人材も資金もある程度保証されていました。

 

私たちリサーチ会社は、成功への道筋を考えに考えて、かなり頑張ってレポートを提出しました。

しかし結局、ものになったプロジェクトは一件もありませんでした。

何故だったのでしょうか。

 

それは、まさに先述の思い入れや情熱というものがなかったからにほかなりません。

大きな企業の、一つのプロジェクトとして、

「うまくいくかどうかわからないけれど、まあとにかくやってみなさい。」

程度の取り組みでした。

担当者も本気ではありませんでした。

 

 

つづく