翻訳者を変えて読んでいた―文学全集、一家に一セットあると思っていたあの頃―13

いろいろと読んでみた「世界文学全集」の中で、何故かドイツ文学が自分にしっくりときた私。

最初はヘルマン・ヘッセの青春文学的な世界に魅せられてよく読んだが、のちにトーマス・マンに傾倒していった。

 

トーマス・マンの代表的な短編作品である「トニオ・クレーゲル」は、今でも最も影響を受けた文学作品の一つであるといえる。

「トニオ・クレーゲル」については、世界文学全集に収められた翻訳者のものだけでなく、別に文庫本を買って読んでみた。

私は、中でも当時高名だったドイツ文学者の高橋義孝氏の訳が好きだった。

 

翻訳する人によって、作品から受ける印象に随分違いがあることを当時発見した。

いくつかの外国作品は、そうやって翻訳者を変えて読むくらい、読書に没頭していたのである。

中学から高校くらいにかけてそんなことをしていたなんて、今思い出してみても驚かされるばかりだ。

 

トーマス・マンは、個人全集まで欲しいと切望した作家であった。

当時、彼の全集はまだ発刊されていなかった。

その後、発刊の情報が入ったときは、うれしくて、すぐに予約したことを覚えている。

 

トーマス・マンの代表作はいろいろあるが、長編小説では「ブッデンブローク家の人々」「魔の山」がある。

しかし、最も有名なのは、中編小説の「ヴェニスに死す」かも知れない。

というのは、「ヴェニスに死す」は、のちに映画監督の巨匠ルキノ・ヴィスコンティによって映画化され、かなり有名になったからである。

 

その他にもドイツ文学については、シュテファン・ツヴァイク、ハンス・カロッサ、テオドール・シュトルムなど、今ではあまり一般に馴染みのない作家のものまで、文庫本などで買いまくってよく読んだ。

当時の私にとって、よほどドイツ文学が肌に合ったものと思う。

 

その他に、ドイツ文学の作家としては、少し有名なところではチェコスロバキア出身のフランツ・カフカがいる。

カフカはその作品の解釈が難解な作家として、当時から名前が知られていた。

 

彼の代表作には、「変身」「審判」「城」といったかなり重たい内容やテーマのものがある。

あの頃の私は、難解ということがわかっていても、あえてそんな文学作品にチャレンジしていたのかも知れない。

 

           トーマス・マン全集。出版と同時くらいに購入しました。

つづく