様々なジャンルの本を読んでいた―文学全集、一家に一セットあると思っていたあの頃―Ⅺ

小学生の頃から家にあった3種類の「文学全集」。

その中で「少年少女文学全集」から始まって「日本文学全集」や「世界文学全集」まで読み進んだ私は、好きになった作家については、後年、それぞれの個人全集まで収集することになったのである。

 

とはいえ、個人全集まで購入できたのはある程度お金が使えるようなった大学生以降の話であって、中学生くらいまでは、とても手が出なかった。

中学生の頃は、「文学全集」から入って好きになった作家の、全集に収録されているもの以外の作品はもっぱら「文庫本」に頼っていた。

 

文庫本については、コツコツと買いそろえていったとはいえ、それもやがて結構な冊数になった。

これらの文庫本は単行本ほどかさばらないので、私は引っ越しのたびに一緒に持っていった。

実家に置きっぱなしだったら、火事のとき、消失していただろう。

だから、今も書斎の隅に積み重ねてある。

 

これを引っ張り出して読むことなどないと思うが、捨てる気にもなれない。

「断捨離」するとすれば、真っ先に第一候補にあげなければならないのだろう。

しかし、この先も、なかなかそんな心境にはならないだろうと思う。

 

改めて、これらの文庫本を眺めてみた。

「文庫本」「新書本」合わせて、200冊以上は有りそうである。

「俺は昔いったいどんな本を読んでいたのだろう?」

と、そのタイトルをひっくり返してみて驚いた。

 

積み重ねてあった一山だけを見ただけで、次のようなものが出てきたのである。

・「われら何をなすべきか」「芸術とはなにか」「人生論」・・トルストイ

・「法華経」「維摩経」

・「哲学入門」・・・バートランド・ラッセル

・「ゲルマニア」・・・タキトゥス

・「みずうみ、人形つかい」「遅咲きの薔薇」・・テオドール・シュトルム

・「二十五時」・・・ゲオルギウ

・「死と愛」・・・ヤコブセン

ざっと一山見ただけで、これだけのバリエーションで、とにかく様々なジャンルの作品が出てきた。

 

「死と愛」・・ヤコブセン、なんてかなりマニアックである。

読んだ本人も覚えていない。

シュトルム、なんていうのも、私は「ああ、そういえば読んだかも・・・」と、覚えているが、知っている人は少ないのではなかろうか。

             書斎の隅に無造作に積み上げられた文庫本。

つづく