レザーが好きでして―コスパがいいと思って買ったんだが・・・・―Ⅱ

一番昔から持っている茶のハーフコートは、内側がフリース仕上げで、冬使用のものだったが、それでも暖かいとはいえなかった。

おまけに内側のフリースはモコモコしていて滑りが悪い。

 

そこで、脱ぎ着がしやすいようになにか裏地をつけることにした。

普通裏地は、ツルツルした化繊(ポリエステルとかキュプラとか)を使うのだが、ここは思い切ってシルクを使ったらどうだろう?と思いついたのだ。

 

シルクの調達には、私に考えがあった。

確か、母が掃いて捨てるほどシルクのスカーフを持っていたはずである。

しかも、いずれもブランド品だ。

ブランドはどうでもよかったのだが、まとまった量のシルクの布地は必要である。

 

母に、いらないスカーフないか聞いてみると、案の定いくらでも持っていた。

わけを話すと、もともとモノがあふれて始末に困っていた母は、喜んで供出してくれた。

 

逆にその量が半端ではない。

目の前にドサッと積まれたスカーフを見て私は、

「きっと、日本中にこんな風に使いもしない無駄な衣類とかがあふれているんだろうなあ。」

と思う。

 

その中から、使えそうな何枚かを選んで、知り合いのテーラーに持ち込んでみた。

さすがに、コートの裏地として、シルクのスカーフを縫い付けてくれ、というオーダーは初めてだったようで、最初少し驚いていたが、

「面白そうですね。やってみましょう。」

と引き受けてくれたのである。

 

やってみて、シルクを1枚裏にかませると、暖かさが一段と増すことにも気がついた。

脱ぎ着のとき、チラリと見える超派手な柄も意外性があって面白い。

これが、私が東京時代から30年近く愛用してきた、最も古い付き合いのレザーのハーフコートである。

 

        チラリと見える裏地は、確かエルメスのスカーフ。

 

つづく