日本の産業界全体に「割り切りと覚悟」が必要―観光産業をモデルに日本の生産性の低さを考える―Ⅶ(おしまい)

日本ではまだ外国人訪日客に十分にお金を落としてもらえるだけの整備ができていない、と主張するアトキンソン氏。

彼は日本の観光産業に対して次のように提言しています。

 

「郷に入れば、郷に従え」「観光客なんだから、あるがままの日本で満足しろ」という上から目線の反論が聞こえてきそうですが、この考え方は間違いであり、愚かだと断言しておきましょう。

 観光戦略は、地方がお金を稼ぐため、要は地方創生のために実行されています。

今のままでは、訪日外国人が落としてくれるはずのお金を、落としてくれはしません。

そのための準備が整っていないために、みすみす取り逃しているのです。

つまり、日本の地方には機会損失が発生している。

観光戦略の本質的な目的に反していることになります。

 外国人の満足は、地方の利益に直結していることを、観光業に携わる人にはぜひ肝に銘じてほしいと思います。

せっかく来てもらった観光客に十分なお金を落としてもらわないと、観光戦略の意味がないのです。

 たいした金額を落とさない観光客がたくさん来ても、それは単なる観光公害でしかありません。

今までの誘致人数主義を1日も早くやめて、稼ぐ戦略を実行するべきです。―

 

「郷に入れば、郷に従え」的な考え方は、まだ日本には強く残っています。

特に地方の場合はそれが顕著です。

 

カード決済が全くできない観光地などは、その典型と言っていいでしょう。

基本的に金を支払う方が、もらう方に合わせるということはあり得ません。

売上が欲しければ、支払ってくれる方に合わせるしかないのです。

 

アトキンソン氏は、迎える側の基盤整備を訴えながら、最後に観光客側にも触れています。

それは「金額を落とさない観光客がたくさん来ても、それは単なる観光公害」と断定している点です。

 

一つの産業として、高い目標を掲げるのであれば、これくらいの割り切りは必要でしょう。

観光業界に限らず、日本の産業界全体に「割り切りと覚悟」が必要なのではないでしょうか。

 

 

おしまい