安定した政権運営の重要性―民主政治の危機、その脆弱さについて考える―Ⅷ

さて、細谷教授は民主政の瓦解の危機に瀕している世界の状況において、日本とドイツの政権に対して期待を寄せておられた。

これは、かなり意外な見解と言っていいのではないだろうか。

 

もちろん両国とも経済大国であることに違いはないが、米中のような立場にはない。

この2つの国が、民主政の危機に際して、世界を救うための一定の方向付けのようなことを成し得るのであろうか。

 

その点に関して、細谷教授は次のように述べられていた。

 

―民主政の現状では、もう一つ興味深い事実がある。

それは、1930年代、ともに民主政の崩壊を経験した日本とドイツで現在、比較的安定した民主主義が見られることである。

日本の安倍首相とドイツのメルケル首相は、先進7か国(G7)の指導者の中で、最も長く首脳の地位にとどまり、最も安定した政権基盤を誇っている。―

 

なるほど、言われてみればその通りである。

特に、日本の場合、安倍首相の登場までは首相の地位が安定せず、毎年猫の目のように変わるために、外国の首脳に名前を覚えてもらうことさえおぼつかなかった。

 

特に外交においては、いつまた政権が変わるかわからないので、その言動があてにできないために、諸外国からは、まともな交渉相手とすら見てもらえなかったのである。

安定した政権運営がいかに重要か、細谷教授の見解からもそれは見て取れるのである。

 

さらにドイツにおいても、メルケル首相の名前と顔は我々もすっかり馴染みになっている。

何かと騒がれるのはトランプ大統領のような人物ではあるが、日独の両首脳の安定感は、細谷教授のいわれるように民主国家陣営の世界においては抜群なのである。

 

 

つづく