無形の企業資産をストーリーとして世に送り出す―それは未来に繫がっているか?情報発信は過去の報告ではない―Ⅰ

私は、もうかなり以前から「経営者は自ら大いに「情報発信」すべし」と提唱しています。

ただ、私がお勧めしている経営者の「情報発信」の内容は、単に会社の「社史」とか「社歴」といったものではありません。

 

また、「社史」や「社歴」を、最もわかりやすく一覧的に表現したものが「年表」といったことになるでしょう。

しかし、それらは私が申し上げる「情報発信」とは、全く異なる意図による成果物です。

 

というのは、「社史」や「年表」は、基本社内に向けたものだからです。

主として内部のメンバーが、自分の会社を振り返るためや何かの記念に作成されるものだ、と私は思っています。

 

せっかく作成した「社史」や「年表」ですので、外部に配布することもあるでしょうが、もらった方にとっては、それほどありがたいものではありません。

おそらく丁重にどこかに仕舞われてそれでおしまい、といった扱いになるのではないでしょうか。

 

もちろん会社の「今」は、そういった歴史の土台の上に成り立っているので、軽視してもいいと言っているのではありません。

「社史」や「年表」は、その歴史をまとめたものですので、会社の沿革を振り返る上では貴重な資料といっていいでしょう。

 

とはいえ「年表」というのはいわば「データ」です。

見やすくわかりやすく、これまでの事実が時系列に書かれた資料なのです。

そこからくみ取れるのは、時代背景とそのとき存在した会社の実態です。

 

私がお勧めする「情報発信」は、いわばその「データ」に魂を吹き込むような作業ということになります。

その歴史の節目節目に学習し、積み上げられた無形の企業資産を、ストーリーとして成形し直し、世の中に送り出してみましょう、という試みなのです。

 

そうすると、私が唱える「情報発信」について

「そうか、我が社の過去の様々な事実について整理しまとめてみればいいのですね。」

と、やや早とちりする方がいらっしゃいます。

もちろん、それはそれで必要なのですが、それだけでは不十分なのです。

 

 

つづく