日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)の重要性について―「歴史問題」に拘らない国々との協定― Ⅰ
10月1日読売新聞の朝刊の論壇「地球を読む」に劇作家である山崎正和氏の日本の外交についての論評が掲載されていた。
山崎氏は、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)の重要性に触れておられた。
この協定はトランプ政権の保護主義的政策を尻目に、自由貿易の旗を高く掲げたものとして評価しておられる。
それは次のような論評である。
―両者を合わせると、世界の国内総生産(GDP)の30%を占めるというから、それだけでも経済的な快挙だが、この協定の歴史的意義は経済に限られるものではない。
日本も欧州も人権、民主主義という基本的価値観を共有し、国民の教育と学術の水準、それに基づく知的財産の生産能力の高さで群を抜く。
さらにおのおの千年を超える伝統文化を背負って、品格ある社会を擁しているのである。―
山崎氏の述べられるこの数行には、実にいろいろな意味が含まれている。
「人権、民主主義という基本的価値観を共有し・・」というのは、中国を強く意識しての表現であろう。
また「おのおの千年を超える伝統文化を背負って、品格ある社会を擁している・・」というのは、まだ歴史が浅くときどき品格において首をかしげたくなるアメリカを意識しての表現であろう。
歴史がありプライドもやたら高いけれど、人権、民主主義において極めて問題の多い中国。
民主主義を掲げ同じく極めてプライドが高いけれど、やや品格に欠けるアメリカ。
両者とも強大な経済力と軍事力を有してはいるが、いろいろと問題は多い。
この両国を差し置いて、日本と欧州が協定を結んだのは、確かに山崎氏の言われるように極めて意義深いことになるのだ。
今後、世界における日本のポジションはどうなるのだろう、と少し危機感を抱いていた私もこの論評にやや救われた感を覚える。
ただ、山崎氏の論評はこれだけに留まらなかった。
後半のインドとの連携はさらに日本の立場というものを考えさせられる内容だったのである。
つづく