顧客のためにその枠を広げていく時代―「税理士だから・・・」で行くのか「税理士でも・・・」で行くのか ―Ⅳ(おしまい)
世の中の役に立たなくては何の意味もないはずの資格業。
資格の範囲で提供しているサービスで充分なはずだ、というのはこちら側の理屈です。
60年以上昔に定められた資格要件が、何回かの改正を経てきたとはいえ、これだけ変化の激しい現代にそのまま通用する訳がありません。
時代に合わせたアレンジをこちら側が工夫していかなければ、最低ライン程度しか世の中の役に立たないのです。
先述したように、法的な制約要件を大きく逸脱する訳にはいきませんが、できる限り顧客のニーズに応じていくべきと私は考えます。
こちらにその姿勢があれば、顧客側には「やってもらいたいこと」というのはかなりのバリエーションで存在するはずです。
税務で充分食ってこれた時代は、税理士側がその点を言わば無視する形で税務にだけ取り組んできました。
しかしながら、経営環境が厳しくなかなか利益の出なくなった現在、税務の中の切り札的項目であった「節税」のニーズが急速に薄れてきています。
税務的な判断の前段階である会計処理についても、コンピュータの発達やクラウド的な技術の普及により、以前より大きく低価格化してきました。
これまでのビジネスモデルでは収入面の維持が難しくなってきたのです。
つまり税理士業も、その資格の範囲を堅持しつつ、中小企業をサポートするためにチャレンジできそうなことには、できるだけ取り組んだ方がいい時代になった、と私は思っています。
「税理士だから・・」と、こちら側の論理で壁を作っていた時代は終わりました。
これからは「税理士でもできることは・・・」と、その枠を広げていく時代だと思っています。
おしまい