ボクシングのヒット&ウェイに似ている?―「トライアル&エラーの勧め」再び―Ⅷ

かつて、鳥居信治郎氏も松下幸之助氏も、よく「やってみなはれ」と言ったという話ですが、この「やってみなはれ」というのは、ニュアンス的には「実行」というよりも「試行」に近い感じがします。

やってみる=試してみる、といった言葉の近さがあるからにほかなりません。

 

「試行」するためには、まず「仮説」が必要です。

「仮説」は「計画」と違って、あれこれそれを作成するための面倒な時間を要しません。

アイデア、閃き、思いつき、といった言葉を彷彿させます。

 

そういった「仮説」を立てたならば、「実行」というよりは、即「試行」ということになります。

ここで時間を空けてはいけません。

何よりもスピードが大事だからです。

 

「試行」の後にはこれまた即「検証」が来ます。

「試行」から「検証」の間もそんなに空けてはいけません。

ここでもスピードが大事です。

 

そうやって「仮説」と「試行」と「検証」を繰り返していくことで、物事を前に進めて行くのです。

トライアル&エラーはボクシングのヒット&ウェイに似ているかも知れません。

まるでボクシングのジャブを繰り出すかのように、手数とスピードが求められるからです。

 

これは、スピード優先の現代のビジネスの進め方に対して、極めて理にかなった考え方と言えるでしょう。

20年も前から自分がこんな主張を行っていたとは驚きですが、当時からビジネス現場において、実はこういった必要性はあったということになります。

 

繰り返しになりますが、問題なのは、いまだにこの課題がほぼ同じテンションで語られているということです。

この20年間、それが必要にもかかわらず、日本経済の中で、そういったビジネス感覚がほとんど進歩しなかった、ということになります。

 

 

つづく