節税のみの期待であれば払拭すべき―税理士としての私のスタンス― Ⅹ
最後に、私が、税理士を「資格」ではなく、「ポジション」と捉え、税務会計の知識を「専門性」ではなく、「媒体」と位置付けることの意味を、一つの事例を参考に述べてみたいと思います。
それは「節税」ということに関しての考え方についてです。
おそらく、大半の人は税理士にその専門領域の仕事を依頼するとき、当然「節税」についてはしっかりやってくれるんですよね、という期待をもって頼むのだろうと思います。
こちらもそれを普通に謳い文句にしているので、別にお互いの意識にズレがある訳ではありません。
しかし、一般の人々の税理士に対する期待がこの点(節税)に集約されているのだとしたら、それはこちら側から少し努力をして、払拭していかなければならないのでは、と私は思っています。
というのは、適正な納税額を算出する過程で、通常可能な範囲の経費計算(節税)はすべてやっているからです。
収入の方に手を加えることは、重いペナルティー(重加算税)が待っていますので、当たり前のことですが、絶対に行ないません。
そうすると、どうしても支出のところで何かないか、となる訳です。
経費の適正性については細かい判断が必要ですが、可能なものはもちろんすべて入れてしまいます。
それでも利益が大きくて「税金が高い!」となったときに、何か無理矢理に経費になりそうな対象を捜すことになります。
ただ、ここで考えなければならないのは、現在税率は概ね30%台前半で済みますが、経費を作って持ち出すとなれば、残りの70%についても現金が減ってしまうということです。
これだけ、世の中の変化が激しく、先に何が起こるかわからない時代にはお金をキープしておくに越したことはありません。
一見、税金が安くて済んだ!と喜んでいても、次の年銀行からお金を借りなくては足りなくなったというのではなんにもならないのです。
つづく