後継者候補がいるのに事業の承継がままならない―ジェネレーションギャップの回避を可能にする方策とは―Ⅱ
事業承継におけるもう一つの見過ごせない重要な問題。
それは、後継者がいるにもかかわらず事業の引継ぎがうまくいかない、という問題です。
これはある意味、後継者がいないという問題よりも悲劇的です。
何故ならば、目の前に後継者候補がいるにもかかわらず、事業の承継がままならないために、社長と後継者の双方が悩みに悩まざるを得ないという問題だからなのです。
特に後継者の方は、うまくいかない期間を結構長い年月引っ張られて、その間に中途半端な年齢になった場合、もうやり直しが効かないという悲劇に見舞われます。
こういう事態だけは何としてでも避けたいものです。
しかしながら、税理士という立場で地方の中小企業に向き合っていますとしばしばこういった悲劇に遭遇します。
悲劇の大きな要因の一つに、双方のコミュニケーション不足ということがあげられます。
この点をさらに掘り下げますと、成功体験を通過してきた先代とまだ経験していない後継者の対立という軸が浮き彫りになってきます。
成功体験が強烈な先代経営者ほど自分のやり方を押し通そうとします。
しかしながら、いかにそれが素晴らしい過去の栄光であったとしても、現代では既に通用しないビジネスモデルであることが多いのです。
後継者は現代に生きる若者ですので、そのモデルでは通じないことは薄々感じているのですが、反証するほどのキャリアもありません。
そこで双方の理解が得られないまま、新しい事業の切り口にもトライすることもなく、空しく日々が過ぎ益々業績の回復が遅れるといった事態に至るのです。
この双方のコミュニケーション不足、理解不足をなんとかして解消する必要性があります。
私はその解決の有効な手段として、事業の持つストーリーの共有ということを提案したいと思うのです。
つづく