そこはかとなく漂う上質感「優美性」―私が「素材」にこだわる理由―Ⅴ

最後にいい素材の持つ「優美性」にも触れてみたい。

これは発色の良さとか、そこはかとなく漂う上質感といったもので、「普遍性」「快適性」の2者とは少し違ってやや曖昧な感覚である。

 

着ることが好きで、洋服やファッションに多少のこだわりのある人であれば気付くであろうこの「見た目の微妙な違い」といった感覚は、そういったことに特に関心のない人にとってはよくわからない世界観かも知れない。

それこそ、微妙な感覚の世界なので、こうやって文章で表現することもなかなか難しいのだ。

 

例えば、冬のカシミアのジャケットを持っているが、見た目の上質感と温かみが、触ってみたとき「やはり!」と納得する感覚と見事に一致する。

つまり、視覚と触覚が釣り合うのである。

その上質感が「期待」を裏切らないという点において、「素材の良さ」は、度々その力を証明してみせるのだ。

 

セーターの発色の良さも、カシミアなど上質な素材になると、その威力を発揮する。

他の素材とは一味違う優美さ、光沢、質感といったものがあるのだ。

 

尤も、見た目がそれとはっきりわかるくらい優美で上質なものは、価格もかなりとびっきりになるので簡単には手が出ないが・・・

私も残念ながらそのクラスのものは所有していない。

 

コットンも同様である。

上質なものはドレープと呼ばれるしわの一つも優美に見える。

これは、織り込まれている繊維一本一本の長さと細さによるものらしい。

もちろんより長くより細いものほど優美である。

 

また、カシミアと同様、いいコットン素材は発色も良くなる。

ポロシャツやサマーセーターなど微妙な色合いのものを何枚か持っているが、「普遍性」の項で書いたように、年を経ても「味が出てくる」といった感じで、「優美性」が失われることはない。

 

 

これはカシミアのマフラー。深いブルーはカシミアならでは、と思わせます。

つづく