「伝統」という名の保守性との戦い―挑戦者は常にアゲンストの風にさらされる― Ⅰ

 

先日、ある大きなビジネスフォーラムで、清酒『獺祭』を世に送り込んだ旭酒造の桜井社長の基調講演を聞く機会がありました。

桜井社長のお話は大変興味深く勉強になりましたので、私なりに少しまとめてみたいと思います。

 

『獺祭』の桜井社長については、先般もこのブログで取り上げさせてもらいました。

前回は、雑誌で取り上げられた記事を基に書きましたが、今回は社長の肉声を聞きしたので、記憶が薄れないうちに書いてみることで、自分の中にも定着させようと思います。

 

桜井社長のお話しでは、まず

「とにかく、おいしい日本酒を造りたい。」

という最も基本的かつポジティブな姿勢で始めた新しい手法の日本酒造りだったということです。

ところが、その原点のところを除く実務の場面では、次々とネガティブな状況に引っ張り込まれます。

 

私は聞いていて、その障害となったのは、大きく二つの要因によるものなのかなあ・・・と思わされました。

 

それは、「伝統」という縦軸「業界」という横軸と表現していいのではないでしょうか。

言うまでもなく「伝統」という縦軸は、長い時間に培われてきた保守性であります。

一方「業界」という横軸は現在のその産業を束ね支えながら守ろうとする保守性であります。

 

どちらも「保守性」と書いたのは、かなりの変化対応、革新が必要な世の中にあって、いずれも現状維持のベクトルが強く働く特性を持っているからです。

考えてみれば、これはなにも日本酒製造の世界だけでなく、どんな業界においても共通して言えることなのではないでしょうか。

 

桜井社長のそれぞれの保守性との戦いを、そのお話の中から取り上げ、私の感想も合わせて書いてみたいと思います。

 

 

つづく