懐かしい友人―ハリスツイードのヘリンボーンジャケット―  Ⅰ

 

冬の定番生地にツイードがある。

ウールを荒く織ったぶ厚い、どちらかといえば野趣あふれる感じの生地である。

同じくぶ厚い冬の生地であるフラノはどちらかといえば肌触りが滑らかだが、ツイードはザラザラと毛羽立っていて武骨ですらある。

 

私は昔から野性味たっぷりのこの生地が大好きだった。

が、振り返ってみるとその割には意外と着る機会は少なかったような気がする。

おそらくそれは私が鹿児島という南国暮らしが長いせいと、近年軽く暖かい素材が普及してきたためであろう。

 

ツイードといえば「ハリスツイード」が有名だ。

これはスコットランド沖のアウター・ヘブリディーズ諸島発祥のツイード生地で・・・・などと私が今さらクドクドと説明するまでもなく、ツイードの中では最も名前の知れた一つのブランドである。

 

こいつを使った洋服の中でも定番中の定番といえば、グレーのヘリンボーンジャケットであろう。

ハリスツイードには無地のものからこのヘリンボーン、チェックなど様々なパターンがあり、それぞれ冬の素材として定着している。

 

以前、真冬にコートなしでこのハリスツイードのジャケットだけを羽織り、街に繰り出したことがあったが、まったく寒さを感じなかった。

荒く織ってあるように見えるので、冷たい風を通すのではないかと危惧したが、その保温力の確かさに舌を巻いたことを覚えている。

これ1枚で充分暖かかったハリスツイード。これは狩猟用の上着をモチーフにしたノーフォークジャケット。

 

つづく