父が逝った―亡くなるまでの1週間を振り返って―Ⅹ
その日の夜は妹が父に付き添うことにして、私は長男と母を連れて病院を離れた。
母を家まで送り、自宅に帰ると久しぶりに家族5人プラス孫までが我が家に揃った。
上京した際には何回か5人そろって食事をしたりしたことはあったが、自宅に揃うのは何年ぶりだろうか。
これも父のお蔭と感謝する。
家族で歓談したあと床に就いたのは12時を回っていた。
寝付いていくらもしないうちにベッドの枕もとの電話が鳴る。
母からの電話だった。
病院にいる妹からの連絡で、父が亡くなったという。
時計を見ると3時半だった。
仕度に時間のかかる家内は後で動くとして、私だけが起き出して服を着替え母のところへと急いだ。
真っ暗な中、母を車に乗せて病院へと向かう。
病室に着くと妹が待っていた。
父は目を閉じ、口は半開きでやや黄色がかった顔色で横たわっていた。
しばらくすると、お医者さんが若い看護婦さんを連れてやって来た。
厳粛な面持ちで
「確認させていただきます。」
という。
ペンライトのようなもので瞳孔を確認し脈を確かめると
「午前5時、確認いたしました。ご愁傷様です。」
と、丁寧に頭を下げられた。
ふと
『彼は、毎日のようにこんなふうに死と向き合っているんだろうな。』
との思いが私の頭をよぎった。
つづく