父が逝った―亡くなるまでの1週間を振り返って―Ⅸ
みんなが到着すると、父の病室が一挙に賑やかになった。
妹や私の長女、次女が枕元で次々と話しかける。
長女の娘(ひ孫)も、顔のそばまで近づけてみるが、父はわかっているのかいないのか判然としない。
ただ、妹や娘たちが話しかける声は、耳の奥では聞こえているようで、時折手を動かしたり、小さなうめき声を上げたりと微かな反応はあった。
私はその日の午後、2件のアポイントが入っていたので事務所に帰らなければならない。
赤ん坊をいつまでも病院に置いておくわけにもいかないので長女と家内も病院を後にする。
夕方再び病院に戻ると、今度は姉たちよりも遅い便で鹿児島に着いた長男が病室にいた。
長男だけは私たちが迎えに行くことができなかったので、空港から病院まで、バスとタクシーを乗り継いでやって来たのだ。
またこの日は、勤務を終えた後、事務所のメンバー代表として3人の職員がお見舞いに来てくれた。
副所長格の女性と父の時代から務めている古参の職員男女2人である。
大勢で見舞いに押しかけるのはもう無理、ということはわかっていたのでこの3人に決めたようだった。
職員たちは短い時間の間にビデオレターまで作っていてくれて、一人一人のお見舞いの挨拶が映像と声とともにカメラの中に収録されている。
見えているのか聞こえているのか判然としない父の枕もとで、かがみこむようにしてその画面を見せていた。
つづく