税理士事務所経営を考える―何も考えずに仕事を続けていることの怖さ―Ⅴ
そう言えばもう一つ、小さなことですが、ちょっとした気付きでそれまでと変えたことがありました。
私が鹿児島に帰った当時は、ようやく職員一人当たり1台のPC(ノートパソコン)が普及し始めた頃でした。
事務所ではみんなが電源につないだままPCを操作するために、それまでよりコンセントが大幅に必要になっていたのです。
そういった事情があって、みんなあちこちから足りない電源を引っ張ってきてPCに繋いでいました。
中には、キッチンの方から長い延長コードをつないで電源に充てている者もいたのです。
あまりにあちこちから電源を引っ張ってごちゃごちゃしているのを見て、私はふと思い出したことがありました。
実は、父の事務所は、私が東京から帰ってくる何年か前、火事にあったのです。
その際、事務所を大きくリフォームしたことは知っていました。
そこで
「待てよ。あのリフォームした際、現代的なオフィス用に改善してあるんじゃないのか?」
と思い当たったのです。
私は直接、火事のあとのリフォームに立ち会った訳ではありませんでしたが、そのことに思い当たりました。
そこで、みんなの机をどかして床を見てみたら、案の定、床から立ち上げ式の電源がいくつもセットされていたのです。
机のすぐ下から繋げられるため延長コードも必要ありません。
みんなのPCをここに繋いで、事務所の中を蜘蛛の巣のように張り巡らされていた延長コードを撤去したのは言うまでもありません。
恥ずかしい話ですが、何人もの人間が働いていながら、これだけのことを思いつかなかったのです。
当時、オフィスにおいてPC用の電源を床から立ち上げることなど、かなり普及していた仕様だったにもかかわらず、そこに思いが及ぶ人間がいなかったことになります。
つづく