税理士事務所経営を考える―「想定内」で済まされることなどない経営の世界―Ⅳ

我々も、税務一辺倒から次のビジネスモデルを模索しなければ、この業界の明日はないな、と私は考えました。

そこで私は、副所長的な立場だったにもかかわらず、職員のみんなに

「これからは、いろいろな角度で自分の仕事を見直すように。新しい仕事の芽やチャンスといったものがないか、自分で工夫したり考えたりするように。」

といった方針を伝えたのです。

 

これには、彼らは一応に相当戸惑ったと思います。

今までと全く真逆のことを言われた訳ですから。

「自分で考えるな。」と言われていたのが「自分で考えろ。」と、言われたのです。

 

仕事に関する様々な案件は、すべて父に聞き父の指示を受ければ事足りる、となっていた父の事務所では、こんな風に自分で考え、提案をした方がいいケース(2期比較決算書が打ち出せることを父は気付いていなかった。)でもそういう思考回路が働かなくなるのです。

 

これはある意味怖いことでもあります。

父もそこまで禁じていた訳ではないのに、職員の方で自主規制が働くか、思いつきもしないか、という事態にまで至ってしまうのです。

 

こういったことが高じてくると、非常に狭い範囲で想定内想定外の境界線が形成されることになります。

ちょっとしたことは、すべて「想定外」に振り分けられ、自分たちとは関係のない対象としてスルーされることになります。

 

狭い範囲の「想定内」で済まされることなどほとんどあり得ない経営の世界において、このスタンスは致命的と私は思いました。

そこで、改革路線を打ち出したわけですが、それが困難を極めたのは言うまでもありません。

 

つづく